アポカリプト |
森で狩りをして平和に暮らしていた部族長フリントスカイとその息子ジャガー・パウたちの村がある日突然、何者かにより襲撃を受け、村人のほとんどが殺されたり捕虜になってしまう。
ジャガー・パウも捕虜となってしまい同じく捕われた村人たちと共にどこかへ連れていかれるが、そこは・・・・といったストーリー。
キリストが処刑されるまでの話を描いた「パッション」で全編当時使われていたアラム語で表現したというメル・ギブソンであるが、今回も全編マヤ語というリアリティへのこだわりようだし、言葉だけでなく、戦いや狩りのシーンも人間の原始的な戦いと暴力のリアリティを追求していて、狂信による人間の狂気や欲望、憎しみによる大量虐殺など結構生々しく表現しているのは残酷で怖い。
またこういう時代を舞台にした映画の衣装はほぼ裸に入れ墨といった単調なイメージになりがちであるが、この映画に登場する民族の衣装やメイクはそれぞれのキャラクターや部族、階級によってうまく個性を出していたと思う。
トライブ模様の入れ墨に覆われ、顔の部分部分にピアスが入った戦士、人骨や獣骨をあしらったファッションをしている神官や、翡翠など宝石で飾り立て、まるでヨーロッパ貴族のような雰囲気で毛羽のついた扇子のようなものを持っている王女、異様な仮面をかぶった処刑人などバラエティーに溢れていて面白い。
またジャングルがシーンの大半を占めているが敵に追われる主人公ジャガー・パウの恐怖の描き方はかなりのサスペンス度で見ていてハラハラするし、人間の怖さだけでなくジャガーや毒蛇が突然襲ってきたりと自然の怖さも描いているのが良い。
しかし、自然が恐ろしいというだけでなく敵を撃退する為、主人公が吹き矢のトゲに捕まえたドクガエルの皮膚の毒を塗り付けたりと利用する面も出てきたりで森に生きる者の知恵や生き方もうまく描かれていたと思う。
今までのこういうテーマで描かれた映画は主に先住民と上陸した西洋人の対立や虐殺、交流などを描いたものが多かったが原住民だけをメインにした作品は初めてだと思うし、人間の根源にあるような獣的な部分を激しく描いた見ごたえのある作品だった。