インランド・エンパイア |
ハリウッド女優であるニッキーはある映画の役を得て撮影に入るが、その映画は実は以前何らかの原因で製作中止になった映画のリメイクといういわくつきの作品で主演の二人が殺されたという噂もあるという・・・・映画のストーリーは主人公の男女二人が不倫する話であるがニッキー自身も相手役の男優と不倫する錯覚に陥り、現実と映画の境界がわからなくなって・・・・といったストーリー。
ストーリーのさわりだけ文章で書くとありがちな感じであるが、あくまでさわりであってリンチの作り出す世界はさらに深くて異様。
突然やってきてまるで未来の事を言い当てるような気持ち悪いおばさんや、テレビの中にいるウサギ人間、この映画全体の展開をテレビを通して見つめ続ける少女、腹にドライバーを刺した女など変なキャラクターが色々登場したり、主人公のニッキーもニッキー本人なのか、誰かの想像の産物の人生なのか、それとも役としてのキャラクターなのかと思わせるようないくつかの別の人生、別の世界が登場したり、時間と別世界が複雑に交錯する展開は凄く不思議。
この構成はリンチが以前同じくハリウッドを舞台に作った「マルホランド・ドライブ」に似ていながら、さらに複雑で謎深い内容である。
「ココとココの要素がつながってこういう事なのか?」と思えば、まださらにその先の展開があって「あれ?」と思わせたり、いくつもの真相の解釈ができるようになっていて1回見ただけでは完了せず、凄く余韻が残る作品でもあるという印象も受けた。
ただ、3時間もあるので何度も見るのは少しツラいが、DVDが出たら気になるシーンを再チェック出来るだろうし今回見た印象とまた違う楽しみ方もできそう。
映像についてもさすがリンチは元々画家を目指していただけあって、ダークな色彩のシュールな絵画を見ているような雰囲気を感じるし、特にウサギ人間のいる部屋のシーンなどは画面構成からしてそのまま絵に見えるように感じた。
また、繰り返し登場する照明器具や光、特定の謎の文字、ドアなどの要素は象徴的だし、赤いカーテンのシーンは凄く印象に残った。
複雑怪奇な展開の映画だったが、そういう細かい謎ばかりを追う楽しみばかりではなく、不思議なイメージの羅列を追うような視覚的体験としても興味深い作品だったと思う。
パンフにリンチの経歴が載っていたが、以前彼に「スターウォーズ ジェダイの復讐」や「レッドドラゴン」の監督オファーがあったが断ったとあったが、彼の描くダースベイダーやレクター博士がどんなものになったのか見てみたかった気もする。