H.R.ギーガー フィルム・デザイン |
この画集はギーガーがこれまでに関わった数々の映像作品でのデザインや絵、立体モデルなどを中心に紹介されており、付録の対訳冊子ではそれぞれの作品についてギーガー自身や映画「エイリアン」で組んだリドリー・スコット監督のコメントが掲載されていたりとても充実した内容である。
私はギーガーの画集は一応大体持ってるが(ギーガーの本は日本では一部を除いてほぼ絶版状態なので、あとは当時入手し損ねた「バイオメカニクス」を探し中)、それらの本の収録作品と重なる部分もあるものの、同じ題材を取り上げていても見た事がなかった作品なんかもあったし、エアブラシ作品やドローイングからどのように映画として再現されたとかの写真も載っていて、画集としての面白さだけでなく映画好きの観点からも資料として貴重な感じ。
今回収録の作品の中では私は「エイリアン」や「フューチャー・キル」、帝都物語の「護法童子」、「ポルターガイスト2」なんかのデザインが結構好きだが、「エイリアン3」用に作られた「バンビ・エイリアン」のデザインも面白かった。
「エイリアン3」では1作目で彼が描ききれなかった第2段階チェスト・バスターと成獣ビッグ・チャップとの途中段階の再現をしてみたかったらしくその変化の過程をイメージしたいくつかのデザインを見られるのも初だったので嬉しい☆
これまで「エイリアン3」にはギーガーの名はクレジットされてなかったし宣伝でも名前は挙がってなかったので参加している事を知らなかったのだが、彼のコメントによると20世紀フォックスとの契約段階で色々うまくいかなかった事があったらしく納得いく協力が出来なかったようで、画家が映画の仕事をする上でのああいう大会社との関係はなかなか難しいものだと思ったし、
私自身こういう映画の仕事も凄く興味あって、いつかやってみたいとも思ってるのでそういう内部事情の話は結構興味深い。
他にも「ポルターガイスト2」では彼のデザインをスタッフが理解できなくてつまらんものにしてしまったとか、日本で作られた「帝都物語」の護法童子は「私のデザインをアヒルにされてしまった」と嘆いていたりで辛口な意見も多く、彼のデザインを本当に活かせたのは「エイリアン」1作目くらいだろうか?
またギーガーは沢山の映画の企画に参加しながら半分くらいが残念ながらダメになってしまってるし、アレハンドロ・ホドロフスキー監督とギーガーが組んだ「デューン 砂の惑星」やギーガー自身が創作した「サン・ゴダートの謎」、リドリー・スコットが監督予定だった「トレイン」など完成が是非見たかった作品も多いし、「バットマン・フォーエバー」ではギーガーがばバット・モービルをデザインする方向だったが彼が多忙だったため中止された話などシリーズが続いているならいつか実現してほしいものもある。
それから劇場用映画の他にギーガー自身を取材したドキュメンタリー作品についても載っていたのだが、私は前に「ネクロノミコン」と「エイリアン」のドキュメントは見た事があるが日本でビデオ化されてる作品では「パッサーゲン(Passages)」という作品だけがどうしても見つからず未見なのでいつかDVD化してほしいものである。