ブラックブック |
第二次世界大戦中のオランダを舞台に隠れ家を追われ、家族も全員殺された元歌手のユダヤ人女性がレジスタンス活動に関わる事になり、スパイとしてナチ将校の愛人のような真似までしながら戦いを続けていくが、彼女はスパイをしながらもナチ将校の事を本当に愛してしまい・・・・といった内容。
昔のこういう系の戦争スパイ映画ではナチスはみんな悪でレジスタンスは正義という単純明快な描き方をしていたが、この映画ではナチスの中にも人間的で虐殺を止めようとする人物もいれば、私利私欲のために殺人と謀略を重ねるようないかにもナチスなキャラクターも登場するし、レジスタンス側もユダヤ人や共産主義者を平気で差別するような事を言ったり、戦争に勝てば戦犯たちをナチス以上の酷い仕打ちを与えて喜んでいたりなどの描写があって、そういう汚い部分もちゃんと描いているあたりが実際に少年期に戦争体験をしたというヴァーホーベン監督ならではのリアルさを感じたし、これまでハリウッドでの作品が多かった監督が戦時中の母国オランダの話をオランダで撮ったというのは彼自身の原点の戻った作品のような気がする。
彼の作品は過激な残虐描写とエロティックさが売りの部分もあるが今回の作品は残虐さは抑え気味なものの、過酷な時代に強く生きた女性の姿をエロティックさを交えながらうまく描いていたと思うし、何より人間ドラマが濃厚で見ごたえがあった。
また誰が裏切り者なのか?などダマし合いに次ぐダマし合いで私も見ていて意外な登場人物が裏切っていた事に驚かされたし、全ての秘密の鍵を握るという「黒い手帳=ブラックブック」に何が書かれていたのか・・・?という謎などスパイ映画としての醍醐味も十分でサスペンスとしてもかなり面白かった。
