インベージョン |
ある日宇宙から広範囲に破片をまき散らしながら爆発し墜落したスペースシャトルには「何か」が付着していた・・・・。
それから人々に異変が起こり始め、主人公の精神科医キャロルも患者から「夫が別人のように思える」などと聞いたり、自分自身もその異変を感じはじめ・・・・といったストーリー。
この「盗まれた街」はこれまでに何度も映画化され、私も78年に映画化された「SF/ボディ・スナッチャー」を見た事があるが、78年版では人間の替え玉を作る時にグロテスクな繭みたいなものや変化の失敗で出来た人面犬みたいなキャラクターが登場したり特殊効果的な面白さが印象に残っている作品だったし、身近な人間がいつのまにか「別のもの」になりかわってしまっているという恐怖もうまく描かれていたが、今回の作品では人体変化のグロテスクな過程はあるものの最小限に表現されていて、どっちかというと日常が日常でありながら「異質」が増殖していく感じや、信用出来る人間が本物の人間のままなのかなど心理面の表現が凄く緻密に表現されている感じはさすが「es」や「ヒトラー 最後の12日間」など卓越した心理面のドラマを描いた作品を作ったドイツのオリバー・ヒルシュピーゲル監督ならではの手腕だと思った。
またオープニングのニュース映像の作り込みなどドキュメンタリータッチなリアルさを感じさせる演出は話に現実感を増して凄く無気味だった。
眠ってしまったら「変化」してしまうなどといった制限つき要素もサスペンスを盛り上げるし、カーチェイスや逃亡などアクションもあり、母が息子を救う為危険を冒したりドラマティックな要素もしっかりあって娯楽部分だけ見ても結構楽しめる内容。
それに「変化」した連中によって戦争や犯罪がなくなっていくなど世界情勢が本物の「人間」だけの世界ではあり得なかった事態に変わっていったり、その後の展開などSFという要素を使って人間というものの存在に対して皮肉めいたメッセージを示していたりするのも面白かったと思う。
主演のニコール・キッドマン自体イメージ的にちょっと人間離れしたような雰囲気があるが、感情を表に出さない変化した連中にまぎれて行動するシーンでは既に変化してしまったのかフリをしてるのか怪しさを感じさせるシーンもあったりでこういうボーダーラインで彷徨うような役はピッタリな気もする。
それから主人公を助ける友人の医師ベン役に新ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグが出ているが、あの時の暗いボンドのイメージとは全く違うさわやかなイイ男な役で意外だった(笑)
エイリアンの侵略というと「インデペンデンス・デイ」のようにストレートに大部隊で襲撃してくるものや「プレデター」みたいにジャングルや街でこっそり人間狩りしてたり色々パターンがあるが、この映画のようにいつのまにか人間がエイリアンにすりかわってしまうという方法が侵略としては効果的だし最も恐ろしい方法だと思う。
