キングダム 見えざる敵 |
世界最大の石油産油国であるサウジアラビア王国と石油を求めるアメリカとの関係に、親米派な国王派に対してイスラムへの冒涜だと反対し、テロを仕掛け続けてきたワッハーブ派、そしてリヤドにある外国人居住区で死傷者300人を越える爆弾テロが起き、その死亡者の中に現地で捜査をしていたFBI捜査官がいた事からアメリカ本国にいる彼の仲間だったFBI捜査官4名がサウジ側に捜査を任せ穏便に解決をはかろうとするアメリカ国家上層部の方針をきかず、強引な方法でサウジに入国、捜査を開始するが・・・・といった内容。
FBI捜査官を主人公とした映画というとアメリカを舞台に連続殺人鬼を相手にプロファイリングを駆使して捜査をするサスペンスや、マフィアを相手児潜入捜査などといったイメージのものが多いが、この映画はサウジアラビアという王国(=キングダム)を舞台に過激なテロ組織と戦うというストーリーはアメリカが今向き合っている「敵」の象徴や現実に多発しているテロへの恐怖などが凄く反映された感じで時代を反映したFBI映画ともいえる。
何とかサウジに入国するも捜査に様々な制限がつき、ちゃんと捜査出来ない状況や彼等の担当になったサウジ側の捜査官もアメリカ側に不信があったりでギクシャクしていたりとうまくいかない状況が続くが、次第にお互い理解していったり、うまくサウジ側の権力者をいい気にさせて捜査権限を広げる事に成功したりと困難な状況を打破していきながら捜査を進めていく展開は面白い。
またアクションシーンというか爆発や銃撃シーンはかなり激しく恐い撮り方をしているし、冒頭のテロのシーンもまず警官に変装したテロリストがパトカーを乗っ取り、居住区を銃撃、自爆テロで人々を避難させた後、人が集まったその避難所を爆破するという巧妙かつ卑劣な手口は凄くリアルさを感じるし、現実にあり得るような説得力がある。
また、この映画はラストのオチというか象徴的な台詞がFBIを主人公にしながらもアメリカ側を絶対的な正義として描いていないし(勿論テロリスト側も正義として扱ってないが)、その台詞が象徴するお互いが持つ憎悪の連鎖がこの先も続いていくという綺麗事ではない皮肉なメッセージを感じ取れて、単なるアクション・サスペンス主体の娯楽映画ではない重いテーマを含んだ作品だったと思う。
