クローズ ZERO |
未だ誰も完全制覇を成し遂げた事がないといわれる「ワル」の巣窟「鈴蘭高校」〜そこに転校してきた滝谷源治はこの鈴蘭の頂点を目指して動き始めるが、鈴蘭制覇に最も近いと言われるA組の芹沢多摩雄とその一派や他の勢力としてC組の牧瀬、D組の伊崎、暴走族武装戦線のメンバー阪東、謎の存在リンダマンこと林田など様々なキャラクターを中心に仲間になったり抗争したりの日々を描きながら、源治にかって自分が成しとげられなかった夢を託す半端なヤクザ片桐やヤクザの組長である源治の父などのサイドストーリーも交え、ストーリーは鈴蘭の頂上決戦に向かって展開していく・・・・。
まず元々の漫画の方はよく本屋に並んでいるのを見る程度で名前は知っていたものの読んだ事はなかったのでどんな話なのかと思っていたが、パンフによると原作の主人公やキャラクターとは違う全くのオリジナルキャラ設定で、ワルの巣窟として荒れ狂い、誰も頂点をとった事がない鈴蘭高校という「クローズ」の中心的世界観を描くという方向性で作ったらしい。
ヤンキー映画というと昔作られた「ビーバップ・ハイスクール」や「ろくでなしBLUSE」などの漫画原作で映画化された作品をテレビで見た事があるが、正直内容的にも映像センスも演技もかなりヒドイ悲惨な出来のあきれる作品(バカ映画としてはこれはこれでかなり面白いが:笑)でお金出してまで見たいジャンルでもなかったのであるが、今回は好きな監督の1人である三池崇史が監督しているという事で彼がヤンキーを題材にした場合、どんな映画になってるのか興味があったし、実際見てみるとアクションシーンというか暴力描写のセンスはさすが迫力があったし、特にクライマックスの雨の中の集団乱闘シーンはかなり見ごたえがあった。
アクション以外ではそれぞれのキャラ設定にいかにもワルそうな外見ながらちょっと変な所があったりギャグを感じさせる要素を入れているのも面白い作りだし、人間ボウリングのシーンなど昔のバカヤンキー映画のオマージュを思わせるようないかにも漫画的な「有り得ない」シーンなんかも少しあって色んな楽しみ方が出来る作品。
それからキャスティングとしてはやべきょうすけ演じるヘタレで弱いヤクザ片桐の役が凄く面白いし、面白いだけでなく男気を感じさせる格好良さもあったり、格好悪いけど格好良いというキャラはこの映画で1番印象に残った。
源治を演じた小栗旬と多摩雄を演じた山田孝之は普段の役のイメージとは全く違うワルな雰囲気を出しているのも良かったし、「クイズ・ヘキサゴン!」でバカ解答を連発している上地雄輔が多摩雄の仲間役で出ていたのには何か笑ってしまった!
それに源治と関わるクラブのヴォーカリスト役で黒木メイサが出ていたのはこういう男臭い話の中に変化を加えるエッセンスとして良かったと思うし、源治の父を演じた岸谷五朗や片桐の親分を演じた遠藤憲一など渋みのある配役もピッタリだったと思う。
「ワル」を主人公にして暴走族やヤクザまで登場するような黒い世界を描いた作品だが、映画を通して心の底から悪いようなキャラクターは1人もいなかったというのはかなり意外だったし、ラストまでスッキリ気持ち良く見れる作品だった。
そんなに内容的に深い作品でもないと思うがアクションあり、笑いあり、男のドラマありと娯楽としては結構楽しめる作品だと思う。
