タロットカード殺人事件 |
舞台はイギリス・ロンドン。
3日前に死亡した敏腕新聞記者だったストロンベルは死神が導く船に乗る中、船上で出会った女性から、今世間を騒がせている「タロットカード殺人事件」の犯人が自分が生前秘書をしていたという青年貴族ピーターの疑いがあると知らされる。
一方夏休み中、友人である金持ち娘ヴィヴィアンの家へ遊びにアメリカからロンドンへ来ていたジャーナリスト志望の女子大生サンドラはヴィヴィアンに誘われて行ったマジックショーで箱に入った人間が消えるというマジックに指命され、箱の中に入った所、何と幽霊となったストロンベルに会い、事件の解明を彼女に託すが・・・・といった内容。
最初タイトルのイメージから「本格ミステリー」だと思っていたのだが、いきなり幽霊が出てくるわ、主人公のサンドラはちょっと間抜けな変な女だし、事件の調査を手伝うハメになる手品師スプレンディーニはかなりお喋りでいらん事話しまくりだったりと、実はミステリーの形をとったファンタスティック・コメディだったという印象で意外ながら面白かった。
まあミステリーとしては「タロットカード殺人」の残されたタロットが何を意味しているのとかは話の本筋とは全く関係なかったり、そんなに深いものでもないし、サンドラが容疑者である青年貴族ピーターに調査の為に接近していったのに愛してしまったり、成り行き上サンドラと親子で大富豪のフリをする事になるスプレンディーニはあからさまに怪しかったり、何かわからないまま事件に巻き込まれてしまった状況ながらあれやこれやと素人探偵たちが頑張って考えて真相に向かい突き進む姿は滑稽ながら面白い。
ラストについても単なるハッピーエンドに終わらず、あるキャラクターの末路がちょっとシニカルな事になってしまっていたりとヒネリの効いた味付けは良かったし、そのあたりはさすが今回スプレンディーニ役で出演し、監督もやったウディ・アレンならではのセンスだと思った。
サンドラを演じたスカーレット・ヨハンソンは最近出た「ブラックダリア」や「プレステージ」での落ち着いたイメージがあるが、今回はバカっぽいけど魅力ある役でメガネキャラというのも新鮮。
それに疑惑の青年貴族ピーター役には「X-メン」でのウルヴァリン役やスカーレットと「プレステージ」でも共演したヒュー・ジャックマンというキャスティングもイメージにピッタリだったと思う。
でも一番印象に残ったのはスプレンディーニを演じたウディ・アレンでスカーレットとのまるでコントみたいな細かい台詞のやりとりがかなり可笑しかった。
音楽に関してはクラッシックの名曲である「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」、「剣の舞」などを劇中に使い、どことなく気品がありながらトボけたようなこの映画の雰囲気をうまく演出していたと思った。