2008年 01月 15日
エンジェル |
エリザベス・テイラーが1957年に発表した小説を原作に「8人の女たち」のフランソワ・オゾン監督が映画化した「エンジェル」を見た。
1900年代初頭のイギリス。小説家を目指す想像力豊かな少女エンジェルは貴族に憧れを抱き、いつか近くにある豪邸「パラダイス屋敷」で暮らす事を夢見ていたが、現実は下町で亡き父が残した食料品店を営む母と暮らす境遇で周囲も想像ばかりしている彼女を冷たい目で見ていた・・・・しかし、彼女が出版社に送った小説が認められた事をきっかけに一躍女流作家として成功し、彼女が思い描いていた富や生活、そしてあの「パラダイス屋敷」までもを手にするが、画家であるエスメに出会い恋してしまった事から彼女の運命は転落し始める・・・・・といったストーリー。
自分の思いに対して正直で強い意志を持ったエンジェルが成功へ向けて進んでいく姿は面白いが、全てを手にしてからは下調べなしに自らの想像だけで書かれた彼女の小説の世界と同じく、結局自らの思いだけで周りの人々の心や状況の現実を全く見ようとしなかったばかりに本当に大事なものを失ってしまうという皮肉な展開は非常にドラマチックだったし、彼女が辿る運命に併せて、それぞれのシーンで彼女の着る服のイメージが変わっていく演出も良かった。
重要なキャラクターとして画家エスメの他に、彼の姉でありエンジェルの大ファンで後に秘書となるノラが登場するが、エンジェルの母が死ぬシーンを見ていると何となく不審な感じがして「もしかしてノラかエスメはエンジェルの資産を狙っていて次々殺害していく展開?」とか勝手にミステリー系の映画風(途中のシーンでもエンジェルがハネムーン後に帰ってきてお気に入りの犬が死んでしまったのに黙っていて同じ種類の違う犬にすりかえた行動とか何か怪しい!)に解釈しかけたが、全然そんな展開ではなかった(苦笑)
でもエンジェルが死ぬシーンが出た時も「やっぱり?まさか?」とか再び思ってしまったが・・・
それにしてもエンジェルの夫となる画家エスメは自分の絵に対する意見はハッキリ言う部分は良いとしても、どうせ俺の絵なんかみんな嫌いなんだとウジウジ連発なのはどうかと思うし、エンジェルと出会う前の話にしろイタリアで人妻に手を出してロンドンに逃げ帰った無様さや、エンジェルと結婚してからも突然軍隊に志願したかと思えば嘘をついて浮気しまくり、博打しまくりで何でこんなダメ男を懸命に愛するのか不可解・・・。
ある意味前にみた「自虐の詩」のお上品イギリス版といった印象の映画でもあった。
しかし、エンジェルのエスメに対する愛し方も一方的だったし、エスメを良い意味で捉えるなら自由奔放過ぎる彼を「パラダイス屋敷」という籠に閉じ込めてしまった事でお互い悲劇に向かってしまったという感じなのだろうか。
ラストに「パラダイス屋敷」をめぐるある人物が登場したり、ちょっとしたサプライズが隠されている展開が用意されていたのも話の作りとしてうまかった気がするし、こういう映画ならではの屋敷の内装や衣装の面白さなどもわりと楽しめて映画としては結構良い出来だったと思う。
でも絵描きの立場からするとエンジェルがエスメに用意したアトリエは妙に豪華過ぎて、絵を各作業というのは結構部屋を汚したり傷をいかせたりしてしまうものだから多少ざっくばらんと小汚いくらいが良いと思うのだが、あんな豪華な感じの部屋だと汚してしまうのに気を使うというか、落ち着いて描けなさそうな気がする(笑)
キャスティングについては主役エンジェルを演じたロモーラ・ガライが貴族に憧れ、そういう生活を手にするという役えおやっているが、前に見た「タロットカード殺人事件」では主人公がホームステイしてるイギリスの金持ちのお嬢様というちょっと逆な対場の役をやっていた事を思い出すと何か面白いし、凄く美人というわけではないものの、意志が強いが脆くて弱いエンジェルという人物のイメージにピッタリ合った女優だったと思う。
またエンジェルを見出した出版社の発行人役を「オーメン最後の闘争」で大人になったダミアン・ソーンを演じたサム・ニールがやっていたり、彼の妻として「エンゼル・ハート」で心臓を抉り取られる占い師を演じたシャーロット・ランプリングが出ていたりホラーファンから見たらちょっとマニアックなキャスティングも興味深い(笑)
1900年代初頭のイギリス。小説家を目指す想像力豊かな少女エンジェルは貴族に憧れを抱き、いつか近くにある豪邸「パラダイス屋敷」で暮らす事を夢見ていたが、現実は下町で亡き父が残した食料品店を営む母と暮らす境遇で周囲も想像ばかりしている彼女を冷たい目で見ていた・・・・しかし、彼女が出版社に送った小説が認められた事をきっかけに一躍女流作家として成功し、彼女が思い描いていた富や生活、そしてあの「パラダイス屋敷」までもを手にするが、画家であるエスメに出会い恋してしまった事から彼女の運命は転落し始める・・・・・といったストーリー。
自分の思いに対して正直で強い意志を持ったエンジェルが成功へ向けて進んでいく姿は面白いが、全てを手にしてからは下調べなしに自らの想像だけで書かれた彼女の小説の世界と同じく、結局自らの思いだけで周りの人々の心や状況の現実を全く見ようとしなかったばかりに本当に大事なものを失ってしまうという皮肉な展開は非常にドラマチックだったし、彼女が辿る運命に併せて、それぞれのシーンで彼女の着る服のイメージが変わっていく演出も良かった。
重要なキャラクターとして画家エスメの他に、彼の姉でありエンジェルの大ファンで後に秘書となるノラが登場するが、エンジェルの母が死ぬシーンを見ていると何となく不審な感じがして「もしかしてノラかエスメはエンジェルの資産を狙っていて次々殺害していく展開?」とか勝手にミステリー系の映画風(途中のシーンでもエンジェルがハネムーン後に帰ってきてお気に入りの犬が死んでしまったのに黙っていて同じ種類の違う犬にすりかえた行動とか何か怪しい!)に解釈しかけたが、全然そんな展開ではなかった(苦笑)
でもエンジェルが死ぬシーンが出た時も「やっぱり?まさか?」とか再び思ってしまったが・・・
それにしてもエンジェルの夫となる画家エスメは自分の絵に対する意見はハッキリ言う部分は良いとしても、どうせ俺の絵なんかみんな嫌いなんだとウジウジ連発なのはどうかと思うし、エンジェルと出会う前の話にしろイタリアで人妻に手を出してロンドンに逃げ帰った無様さや、エンジェルと結婚してからも突然軍隊に志願したかと思えば嘘をついて浮気しまくり、博打しまくりで何でこんなダメ男を懸命に愛するのか不可解・・・。
ある意味前にみた「自虐の詩」のお上品イギリス版といった印象の映画でもあった。
しかし、エンジェルのエスメに対する愛し方も一方的だったし、エスメを良い意味で捉えるなら自由奔放過ぎる彼を「パラダイス屋敷」という籠に閉じ込めてしまった事でお互い悲劇に向かってしまったという感じなのだろうか。
ラストに「パラダイス屋敷」をめぐるある人物が登場したり、ちょっとしたサプライズが隠されている展開が用意されていたのも話の作りとしてうまかった気がするし、こういう映画ならではの屋敷の内装や衣装の面白さなどもわりと楽しめて映画としては結構良い出来だったと思う。
でも絵描きの立場からするとエンジェルがエスメに用意したアトリエは妙に豪華過ぎて、絵を各作業というのは結構部屋を汚したり傷をいかせたりしてしまうものだから多少ざっくばらんと小汚いくらいが良いと思うのだが、あんな豪華な感じの部屋だと汚してしまうのに気を使うというか、落ち着いて描けなさそうな気がする(笑)
キャスティングについては主役エンジェルを演じたロモーラ・ガライが貴族に憧れ、そういう生活を手にするという役えおやっているが、前に見た「タロットカード殺人事件」では主人公がホームステイしてるイギリスの金持ちのお嬢様というちょっと逆な対場の役をやっていた事を思い出すと何か面白いし、凄く美人というわけではないものの、意志が強いが脆くて弱いエンジェルという人物のイメージにピッタリ合った女優だったと思う。
またエンジェルを見出した出版社の発行人役を「オーメン最後の闘争」で大人になったダミアン・ソーンを演じたサム・ニールがやっていたり、彼の妻として「エンゼル・ハート」で心臓を抉り取られる占い師を演じたシャーロット・ランプリングが出ていたりホラーファンから見たらちょっとマニアックなキャスティングも興味深い(笑)
by lucifuge
| 2008-01-15 22:17
| 映画/洋画