スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 |
19世紀のイギリス、ロンドン。美しい妻ルーシーとまだ生まれたばかりの娘ジョアナとともに幸せに暮らしていた理髪師ベンジャミンはその幸せを妬み、美しい妻を欲した悪徳判事ターピンの手によって無実の罪を着せられオーストラリアに島流しにされていたが、脱出し船乗りのアンソニーに救われ15年ぶりにロンドンに帰ってきた・・・。
しかし妻はターピンの魔の手に落ちた後毒を飲み、娘はターピンの養女として屋敷に閉じ込められているという。
ベンジャミンは昔住んでいたミセス・ラベットの営む売れないパイ屋の2階に戻り、理髪師スウィーニー・トッドとしてターピンへの復讐の機会を狙うが・・・・・といったストーリー。
「スウィーニー・トッド」の物語自体は前に90年代くらいに作られた劇映画で見て知っていたのであるが、この作品はスティーブン・ソンドハイム版のミュージカルを元にした内容のため、人物設定や関係、イメージがだいぶ違っていたし新鮮に見られた。
スウィーニー・トッドが髭剃りに来た客を殺すという残虐なアイデアと、その死体を1階のパイ屋でミートパイにしてしまうというタブー的な「人肉食」要素を含んでいる猟奇的な物語はかなりインパクトがあるが、そういう強烈な物語をティム・バートンの描く幻想的でダークな映像センスと歌での表現という融合が不思議な面白さを生んでいたと思う。
また貧しく悲惨な19世紀イギリスの生活情景や復讐と殺人という恐ろしいテーマ性ながら根底には人間同士の持つ激しい愛情や想い、欲望、憎悪など様々な感情が描かれていたり、元々幸せだったはずの人間がひとつの邪な想いのせいでボタンを掛け違えたように次々悲劇と破滅への道を歩んでいく姿は何とも切ない。
それぞれの登場人物がどこか悪の要素を持つが、どこか人間的な弱さや愛情が残ってるように描かれていたりそういう複雑なキャラクター性も魅力的だった。
スウィーニーを演じるジョニー・デップはじめへレナ・ボナム・カーター演じるミセス・ラベットのメイクは白塗りに目元あたりが薄黒いゴスな感じだったのも好きなイメージだし(ただジョニーのヘアデザインが一部白のメッシュが入っていたりで一瞬細木数子か関口宏かと思ったが:笑)、ターピンを演じるアラン・リックマンは最近「ハリー・ポッター」シリーズなどでイイ人役イメージがついてきたものの、元々彼は「ダイ・ハード」の悪役でインパクトがあった人だし、今回久々の悪役はやっぱりハマっていたと思う。
