2008年 01月 25日
ジェシー・ジェームズの暗殺 |
ブラッド・ピット主演の実話を元にした映画「ジェシー・ジェームズの暗殺」を見た。
19世紀、南北戦争後のアメリカを舞台に「義賊」と民衆に英雄化された犯罪者ジェシー・ジェームズがジェシーの信奉者で部下だったロバート・フォードに殺されるまでを描いた映画である。
ジェシー・ジェームズはアメリカでは西部劇のヒーローとして有名らしく、これまで何度も小説や映画化されてきたが、今回の映画では今までのジェシーの持つイメージとは全く違った人物像で描かれているのが面白い。
ここで描かれるジェシーは妻や子供の前では「良い父親」であるものの、ひとたび犯罪モードに入れば平気で人を脅し殺すような冷酷な人間になるし、勝手に仲間が自分を裏切ってるのではないかと疑心暗鬼になって殺してしまったり、さっきまで楽しく仲間と話していたと思えば突然キレて殺しかねないようなマネをしたり、そう思ったら突然冷静になったり、そういう支離滅裂でワケわからん感情の動きや突如爆発する暴力性など犯罪者ならではの怖さをうまく表現していたし、ブラッド・ピットはそんなジェシーの持つ複雑な感情の変化の怖さを巧みに演じていたと思う。
対してもう一人の主役であるロバートはアメリカでは「裏切り者」の代名詞のように思われているらしいが、ここではジェシーの伝説を本で読み、子供の頃からずっと憧れていた男に仲間として迎えられた男が何故その憧れの男を殺すに至ったのかという心の変化を凄く繊細に描写していたし、ロバートがジェシーを殺す事で本当に得ようとしたものが全く得られず、その後たどる苦難の人生も皮肉めいていて「ジェシー・ジェームズ」という伝説に取り憑かれた事で人生を狂わせてしまった男の悲劇の物語であるともいえる。
でもジェシーは警戒しながらもロバートに新しい銃をプレゼントしたり、武装を解いたり、ロバートの不審さに気付いていながら何故そんな行動をとったのか不可解。
もしかしたらジェシーはこういう犯罪生活に疲れて死ぬ事を望んでいたのかも?
主要登場人物二人の他にもギャング団の他のメンバーたちの性格や人間関係が様々に絡み合っていたり、その関係から生じるひずみによって彼等に死がもたらされたり、ジェシーとロバートの関係に溝が出来ていったり物語を複雑にしながら深みを持たせているし、そういった集団の心理ドラマとして見ごたえがある以外にジェシーとロバートの心の駆け引きやロバートがいつ、どういう風にジェシーを殺すのかという緊張感もクライマックスまで持続させていってサスペンスとしても結構見せる作品だった。
ジェシーもロバートも大衆やマスコミによって実像とは違うイメージを祭り上げられ、数奇な運命をたどり悲劇的な最後を遂げて後世に名を残したが、結局彼等は大衆にとって「現実」のものではない夢物語の登場人物のような、まるで現代におけるアイドルや悪役レスラーのような娯楽のひとつでしかなく、彼等の真実の姿など誰も興味がなかったのかもしれない。

19世紀、南北戦争後のアメリカを舞台に「義賊」と民衆に英雄化された犯罪者ジェシー・ジェームズがジェシーの信奉者で部下だったロバート・フォードに殺されるまでを描いた映画である。
ジェシー・ジェームズはアメリカでは西部劇のヒーローとして有名らしく、これまで何度も小説や映画化されてきたが、今回の映画では今までのジェシーの持つイメージとは全く違った人物像で描かれているのが面白い。
ここで描かれるジェシーは妻や子供の前では「良い父親」であるものの、ひとたび犯罪モードに入れば平気で人を脅し殺すような冷酷な人間になるし、勝手に仲間が自分を裏切ってるのではないかと疑心暗鬼になって殺してしまったり、さっきまで楽しく仲間と話していたと思えば突然キレて殺しかねないようなマネをしたり、そう思ったら突然冷静になったり、そういう支離滅裂でワケわからん感情の動きや突如爆発する暴力性など犯罪者ならではの怖さをうまく表現していたし、ブラッド・ピットはそんなジェシーの持つ複雑な感情の変化の怖さを巧みに演じていたと思う。
対してもう一人の主役であるロバートはアメリカでは「裏切り者」の代名詞のように思われているらしいが、ここではジェシーの伝説を本で読み、子供の頃からずっと憧れていた男に仲間として迎えられた男が何故その憧れの男を殺すに至ったのかという心の変化を凄く繊細に描写していたし、ロバートがジェシーを殺す事で本当に得ようとしたものが全く得られず、その後たどる苦難の人生も皮肉めいていて「ジェシー・ジェームズ」という伝説に取り憑かれた事で人生を狂わせてしまった男の悲劇の物語であるともいえる。
でもジェシーは警戒しながらもロバートに新しい銃をプレゼントしたり、武装を解いたり、ロバートの不審さに気付いていながら何故そんな行動をとったのか不可解。
もしかしたらジェシーはこういう犯罪生活に疲れて死ぬ事を望んでいたのかも?
主要登場人物二人の他にもギャング団の他のメンバーたちの性格や人間関係が様々に絡み合っていたり、その関係から生じるひずみによって彼等に死がもたらされたり、ジェシーとロバートの関係に溝が出来ていったり物語を複雑にしながら深みを持たせているし、そういった集団の心理ドラマとして見ごたえがある以外にジェシーとロバートの心の駆け引きやロバートがいつ、どういう風にジェシーを殺すのかという緊張感もクライマックスまで持続させていってサスペンスとしても結構見せる作品だった。
ジェシーもロバートも大衆やマスコミによって実像とは違うイメージを祭り上げられ、数奇な運命をたどり悲劇的な最後を遂げて後世に名を残したが、結局彼等は大衆にとって「現実」のものではない夢物語の登場人物のような、まるで現代におけるアイドルや悪役レスラーのような娯楽のひとつでしかなく、彼等の真実の姿など誰も興味がなかったのかもしれない。

by lucifuge
| 2008-01-25 21:03
| 映画/洋画