敵は本能寺にあり~信長の棺・完結編 |

この作品は2006年に放送された松本幸四郎主演のスペシャルドラマ「信長の棺」に続く完結編として作られたもので、同じく加藤廣の本能寺三部作の1つ「明智左馬助の恋」を原作としている。
天正6年、天下に向かって猛進する織田信長に気に入られながらも、主君である明智光秀に恩を感じ応じなかった三宅弥平次は後にかって恋仲で結婚を約束した仲だったながら信長のひとことで他の武将と政略結婚させられ、別れ舞い戻った光秀の娘綸と結婚し、光秀の養子として明智左馬助を名乗る。

しかし日々冷酷さを増す暴走と傲慢ぶりに、それを止めようと謀反を決意した光秀だったが・・・・・といった内容。
前作は信長の側近だった牛田牛一の視点から信長の死の謎を追っていく話だったが、今回は明智光秀の養子である明智左馬之介の視点から本能寺の変と信長の死を描いているという謀反グループの側から見た事件の描写は面白い。
またこれまであまり知らなかった信長と光秀に関係する公家、近衛前久の存在で権威だけで実質的な力を失った公家が武家とどう渡り合うかという駆け引きや安土城におけるある恐れ多い信長の思惑などが絡んで暗殺に向かって動き出す様子などこれまでの「本能寺」モノと違う要素があって新鮮だった。

また影で暗躍する家康や秀吉の動向も描かれていて様々な人物の様々想いや欲望が入り乱れた緊張感のあるドラマに仕上がっていたと思う。
主人公左馬助も信長を敬いながら、度重なる主君光秀への冷たい仕打ちや婚約者の事で複雑な想いもあったり、武士としての野心や忠誠など信長と関わった事で変わっていった彼の人生の選択をドラマティックに描いていたし、これまで安易に天下を取ろうとしたただの「謀反者」と思われがちだった光秀のリアルな姿や、いかにしてそういう想いに至ったり背後にどんな人物関係があったかなども細かく描かれていたのも興味深い。
テレビドラマであるものの話として非常に重厚に作られているし、ちょっと前に見た「茶々~天涯の貴妃」なんかよりずっと面白かったと思う。