2008年 02月 29日
アメリカン・ギャングスター |
デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが主演した実話をベースにした映画「アメリカン・ギャングスター」を見た。
1968年、ハーレムの黒人ギャングのボスだったバンピーが死んだ事により、ずっとバンピーに仕えてきたフランク・ルーカスは様々な組織がひしめき合う暗黒街の中、誰の下にもつかず、自らの手で新たな麻薬ビジネスを開始する・・・・一方犯罪者たちから警官への賄賂が横行する腐敗した状況の中、賄賂を否定するなど一人自らの正義を貫き、警察内部からは疎外されていた刑事リッチーはその正義感を買われ蔓延る麻薬に対して特別に新設された「麻薬捜査班」の責任者に抜擢される。
そして困難な捜査の末、今まで影に隠れていたフランクの存在を見つけたリッチーは徐々にフランクを追い詰めていき・・・・といった内容。
かってアメリカにはギャングという存在を暴力や抗争といった争いばかりしている単なる犯罪者集団という認識ではなく、「ビジネス」のための集まりでありそこに争いや下らない民族主義などは無用だという革新的発想をしたラッキー・ルチアーノというマフィアのボスがいたが、この映画のフランクもあくまでギャングはビジネスであり自らが成功するための手段、そして麻薬ビジネスにおいてこれまで組織や仲介者を通した取引をしていたために、純度が低い粗悪品ばかりが流通していたのを直接タイの製造元から組織を通さず仕入れるという革新的発想を持った新たなギャングという点が面白い。
またフランクのキャラクターの描き方は普段は家族を大切にし、よき息子でよき兄、よき夫であるという優しい面もありながら自分の邪魔をする人間にはたとえ血縁者でも容赦無い暴力性を発揮し、残虐でもあるという二面性は恐ろしいし、まぎれもない犯罪者だがよくあるステレオタイプの悪役のように存在の全部が「悪」であるというのとは全く違う、人間誰しもが持っているであろう善でも悪でもあるような灰色の存在としてうまく描かれている。
特にさっきまで兄弟とカフェで談笑していたフランクが表を通った対立組織の男を見て突然外に出て行ったと思うと射殺してしまい、また何も無かったようにカフェに戻って談笑しているシーンは衝撃的だったし、ギャングという存在の怖さを印象的に表現していたと思う。
そして対抗する麻薬捜査班のリッチー刑事のキャラクターに関しては、正義感のある男だが女性関係にだらしなく元妻と子供をめぐる親権争いの裁判をしていたり、昔馴染みの友人がイタリアン・マフィアのメンバーだったり、こちらもキャラクターとして完全に善人ってわけでもないし、かといって犯罪者には絶対に買収されたりしない強い意志を持った男で、この映画の人物描写の特徴としてはこういう灰色な感じの人物像をリアルに生き生きと描いているのが魅力のひとうであるともいえる。
リッチー刑事を中心とした麻薬捜査班の面々も同じく犯罪者に迎合しない強い男たちで、その姿はまるで新たな「アンタッチャブル」といったイメージも連想するし、革新的黒人ギャングと周りから疎外されながら強い意志で犯罪者を追い詰める刑事という構図は昔ながらのイメージを踏襲しつつも新しい感覚で見せてくれるし、クライマックスシーンであるフランクの麻薬精製所を襲撃するシーンはかなりサスペンスフルなシーンで興奮した☆
さすがに事実をベースにしているだけあってフランクの取引にベトナム戦争が関係していたり、イタリアンマフィアや悪徳警官との緊迫感あるやりとりの描写など犯罪の描き方がリアルだったし、家族の中でのフランクやお互い愛し合いながらもギャングという存在であるゆえに想いがうまくかみあわなくなったりする心のドラマの描写なども秀逸でギャング映画というジャンルにとどまらない深く味わいのある映画に仕上がっていたと思う。
監督は「ブレードランナー」や「エイリアン」のリドリー・スコットであるが、映像的には昔のようなスモーク漂う光と影の幻想のようなスタイルではなく、もっと生身な感じのリアリティを感じさせる映像に仕上がっていたし、街の情景やファッション、音楽にいたる作りこみは60年代末期から70年代にかけてのアメリカ文化をその当時の空気を感じるくらい見事に再現していて、新たなリドリー的世界の魅力が十分に感じられたし、これまでギャング映画の名作にはコッポラの「ゴッドファーザー」やスコセッシの「グッドフェローズ」などが有名であるが、このリドリーの「アメリカン・ギャングスター」もそれに匹敵する素晴らしい完成度の作品。
ここ数年で見たギャング系の映画ではスコセッシの「ディパーテッド」がベストだったが私的にはこっちの方が好みかも。
1968年、ハーレムの黒人ギャングのボスだったバンピーが死んだ事により、ずっとバンピーに仕えてきたフランク・ルーカスは様々な組織がひしめき合う暗黒街の中、誰の下にもつかず、自らの手で新たな麻薬ビジネスを開始する・・・・一方犯罪者たちから警官への賄賂が横行する腐敗した状況の中、賄賂を否定するなど一人自らの正義を貫き、警察内部からは疎外されていた刑事リッチーはその正義感を買われ蔓延る麻薬に対して特別に新設された「麻薬捜査班」の責任者に抜擢される。
そして困難な捜査の末、今まで影に隠れていたフランクの存在を見つけたリッチーは徐々にフランクを追い詰めていき・・・・といった内容。
かってアメリカにはギャングという存在を暴力や抗争といった争いばかりしている単なる犯罪者集団という認識ではなく、「ビジネス」のための集まりでありそこに争いや下らない民族主義などは無用だという革新的発想をしたラッキー・ルチアーノというマフィアのボスがいたが、この映画のフランクもあくまでギャングはビジネスであり自らが成功するための手段、そして麻薬ビジネスにおいてこれまで組織や仲介者を通した取引をしていたために、純度が低い粗悪品ばかりが流通していたのを直接タイの製造元から組織を通さず仕入れるという革新的発想を持った新たなギャングという点が面白い。
またフランクのキャラクターの描き方は普段は家族を大切にし、よき息子でよき兄、よき夫であるという優しい面もありながら自分の邪魔をする人間にはたとえ血縁者でも容赦無い暴力性を発揮し、残虐でもあるという二面性は恐ろしいし、まぎれもない犯罪者だがよくあるステレオタイプの悪役のように存在の全部が「悪」であるというのとは全く違う、人間誰しもが持っているであろう善でも悪でもあるような灰色の存在としてうまく描かれている。
特にさっきまで兄弟とカフェで談笑していたフランクが表を通った対立組織の男を見て突然外に出て行ったと思うと射殺してしまい、また何も無かったようにカフェに戻って談笑しているシーンは衝撃的だったし、ギャングという存在の怖さを印象的に表現していたと思う。
そして対抗する麻薬捜査班のリッチー刑事のキャラクターに関しては、正義感のある男だが女性関係にだらしなく元妻と子供をめぐる親権争いの裁判をしていたり、昔馴染みの友人がイタリアン・マフィアのメンバーだったり、こちらもキャラクターとして完全に善人ってわけでもないし、かといって犯罪者には絶対に買収されたりしない強い意志を持った男で、この映画の人物描写の特徴としてはこういう灰色な感じの人物像をリアルに生き生きと描いているのが魅力のひとうであるともいえる。
リッチー刑事を中心とした麻薬捜査班の面々も同じく犯罪者に迎合しない強い男たちで、その姿はまるで新たな「アンタッチャブル」といったイメージも連想するし、革新的黒人ギャングと周りから疎外されながら強い意志で犯罪者を追い詰める刑事という構図は昔ながらのイメージを踏襲しつつも新しい感覚で見せてくれるし、クライマックスシーンであるフランクの麻薬精製所を襲撃するシーンはかなりサスペンスフルなシーンで興奮した☆
さすがに事実をベースにしているだけあってフランクの取引にベトナム戦争が関係していたり、イタリアンマフィアや悪徳警官との緊迫感あるやりとりの描写など犯罪の描き方がリアルだったし、家族の中でのフランクやお互い愛し合いながらもギャングという存在であるゆえに想いがうまくかみあわなくなったりする心のドラマの描写なども秀逸でギャング映画というジャンルにとどまらない深く味わいのある映画に仕上がっていたと思う。
監督は「ブレードランナー」や「エイリアン」のリドリー・スコットであるが、映像的には昔のようなスモーク漂う光と影の幻想のようなスタイルではなく、もっと生身な感じのリアリティを感じさせる映像に仕上がっていたし、街の情景やファッション、音楽にいたる作りこみは60年代末期から70年代にかけてのアメリカ文化をその当時の空気を感じるくらい見事に再現していて、新たなリドリー的世界の魅力が十分に感じられたし、これまでギャング映画の名作にはコッポラの「ゴッドファーザー」やスコセッシの「グッドフェローズ」などが有名であるが、このリドリーの「アメリカン・ギャングスター」もそれに匹敵する素晴らしい完成度の作品。
ここ数年で見たギャング系の映画ではスコセッシの「ディパーテッド」がベストだったが私的にはこっちの方が好みかも。
by lucifuge
| 2008-02-29 19:57
| 映画/洋画