歴史を変えた呪いの真相 |
歴史のおける「呪い」が関わったと思われる9つのミステリーな事件を描いたものであるが、ツタンカーメンの指輪にまつわる呪い、エジプト・ミイラにまつわる呪い、ルイ14世と黒ミサ、ナポレオンの祟り、アメリカ南部奴隷の呪い、呪いのメルセデス・ベンツ、英国王室の呪い、日本史の中の呪い、ヒトラーと呪いといったエピソードが収録されている。
ツタンカーメン発掘に関わった人間が次々死んでいった話は有名であるが、たまたま高齢者や病気の者がいて亡くなったのをマスコミが派手に「呪い」呼ばわりして新聞を売ろうとしたという説があるし、呪いかどうかは怪しい話であるが、この本に収録されているツタンカーメンの指輪を手にした人々が次々死んでいた話は知らなかったし、次のミイラの呪いの話では沈んだタイタニックにその問題のミイラが積まれていたというのは興味深い。
実際あまり知られていないが日本でも高松塚古墳発掘に関わった人間が連続怪死していたりこういう古代の遺物の発掘に関する呪いはあるのかも?
古墳といっても墓だしミイラも死体なんだからそういうものをいくら学術的に研究発掘するにしても、掘られて眠りを妨げられた立場から考えた場合、迷惑な墓荒らしと変わらないんだし呪い殺してやろうという気にもなるかもしれない。
またルイ14世の寵愛を受けたいばかりに黒魔術で邪魔者に呪いをかけたモンテスパン侯爵夫人のエピソードも載ってるが、これは呪いでなくとも何人かの協力者がいれば毒を盛ったり陰謀めいた事はいくらでも可能だった時代だし、皮肉にも一見華やかな宮廷生活の裏にはそういう卑劣な陰謀や黒魔術が当たり前に横行する歪んだ世界があったという事実が面白い。
それから持ち主に不幸をもたらすメルセデスは第一次大戦の引き金となった暗殺されたオーストリア皇太子が乗っていたものであったり、英国王室の新婚旅行に使われているブリタニア号の過去にある女の怨みが取り憑いていた影響で王室内の不和が生じているという説とかモノに取り憑いた呪いというのも昔からよくいわれる呪いの形のひとつであるが、こういうのって全く関係のない人に不幸を呼ぶので1番タチが悪いと思う。
日本史における呪いでは卑弥呼が呪術で人民を統制していた話が描かれているが、こういうのは古代社会では当たり前にあった支配のスタイルだし、本来の「呪い」とはちょっと違う気がしたが、安倍清明といった陰陽道呪術の有名どころや平将門といった日本最強の怨霊ともいえる存在のエピソードも紹介されていて今は平和な日本も結構ドロドロした歴史の上に成り立ってるものだと感じた。
ラストエピソードであるヒトラーと呪いについてはヒトラーとナチスが魔術結社とつながりがあったという話は有名であるが、第二次大戦自体影では魔術による呪いの戦争だったという説が展開されているのは面白かったし、同じく戦時中の日本も軍部が密教の僧侶を使って敵を呪わせたという話があって(こういう話は映画「帝都大戦」でも描かれていたが)、科学万能でオカルトを全否定するような現代社会と違って当時はまだまだそういうオカルトめいたものが人間の思考と密接に関わっていた事実に驚きだし、そういう不思議で怪しい時代って何か想像が広がって創作にも活かせそうな感じもした。
結局「呪い」が実在するかどうかはわからないが何か人間の理解を超えた「力」のようなものはある気がするし、そういう力が何らかの偶然の作用や法則にハマったせいで歴史上にある数々の不可解な事件が起きたのかもしれない。
