狂気なやつら |
収録作品はを描いた「ぬいぐるみ」、異常な行動をする教え子に恐怖する家庭教師を描いた「家庭教師」、話さない幼児に隠された悲しい秘密を描く「ビー玉」、事故に遭った事から突然謎の集団に拉致された男の運命を描く「地下病院」、友人とはじめた奇妙な遊びから起こる恐怖を描く「サイコごっこ」、ちょっとした老人からの頼み事が実は恐ろしい結末につながっていた「親切」、引越し先の部屋に現われた謎の素振り男の恐怖を描く「素振り」、病院まで行きたいという赤ん坊を抱いた女を車に乗せた事から体験する恐怖を描く「病院まで」、コンビニに買い物に出かけて帰ってこない彼氏を探しに行った女性が目にした恐怖を描く「コンビニ」、別れた男からの執拗な嫌がらせの恐怖を描く「祟り場」、エンストした事から助けを求めたスタンドの店員が狂気に走る「エンスト」、交通事故を目撃した事から起こる恐怖を描く「事故」の全12話。
ここに収録された物語は彼の著作「東京伝説~うごめく街の怖い話」から彼自身がセレクトした作品を再構成したものらしいが、脚色はあるものの、全て取材から得られた「実話」というのが怖い!
特に最初のエピソード「ぬいぐるみ」は二ツ木哲郎の絵も含めてかなり不気味に仕上がってるし、身近な所に潜む狂った人間の怖さを見事に描いている。
また「家庭教師」はこういう思考や倫理観がオカシイ少年が所々に存在していると思うと恐怖だし、こういう子供を育てる同じような思考を持った親の存在も恐ろしく感じる。
また「ビー玉」や「素振り」、「祟り場」などの話は今の社会において問題になっている虐待やひきこもり、ストーカーなど親子関係や恋人関係から狂気に発展する形を描いていたり、「親切」などは老人が生きていきにくい社会の闇の一部を見るようなショックを感じる。
それから「地下病院」はちょっとしたきっかけから普段は見る事はないだろう闇社会の一端ニ遭遇してしまう怖さを描いているし、普段ニュースで報道されているような理由がよくわからないような殺人は実はこういう見てはいけないものを見てしまった人が何らかの組織の手によって口を封じられているのかもしれない。
しかしながら「病院まで」の話はオチを含めていかにも都市伝説っぽかったし、「エンスト」に出てくるキ○ガイのオッサンの手口は去年見たスリラー映画「モーテル」の殺人者の手口にそっくりだったが、その部分は脚色だろうか?
漫画の間に収録された平山夢明によるホラー新作短編も結構ゾッとする話で面白かったし、彼が「まえがき」で書いていた「だってみんなおかしいじゃないですか」という言葉は最近の通り魔事件や今日起こったホーム突き落とし事件なんかを考えると本当にそうかもしれないと思ってしまう。
どこにそういう狂気にとらわれた人間がいるかはわからないし、見ず知らずの人間を死においやるような事が次々起こる社会は恐ろしい・・・。
それに今日の朝刊で読んだのだが、高校の教科書検定で美術の教科書に載るはずだった横尾忠則のポスター作品が、ポスターにごく小さな文字で書かれた文(実際教科書に載る段階では見えないくらい縮小される文字なのに)が教育に不適切だと違う作品に差し換えになったという記事で横尾氏も「そんな重箱の隅のさらに隅をつつくような行為は異常」と不満をもらしていたが、こういう検定の連中も本来の高校生の立場にたって教育としてどうかという思考はなさそうだし、自らの倫理道徳を至上におかしな方向で物事を判断している気がするが、犯罪でないにしろあらゆる所にこういうどこか「狂気な」人間はどんどん増えていっているのかもしれない・・・・・。