ラフマニノフ ある愛の調べ |
破産した両親に放っておかれた12歳のラフマニノフはモスクワ音楽院の教授ズヴェレフに才能を認められ、養育と熱心な音楽の指導を受けるもピアニストとしての精進を求める教授に対し、作曲する事に目覚めてしまったラフマニノフは対立、さらに年上の富豪女アンナとの恋愛にのめりこんで素行が乱れていった・・・やがてラフマニノフはアンナのために書いた「交響曲第1番」を完成させ演奏会を開催するが指揮にあたった酔っ払い指揮者のせいで演奏会は大失敗に終わりアンナにも去られてしまって、失墜の中彼を励ましたの従姉妹のナタ-シャだったが、やがて女子高の教職についたラフマニノフは彼の音楽のファンながらマルクス主義に心酔するマリアンナに恋し「交響曲第2番」を完成させ演奏会も大成功するが、マルクス主義のコミュニティは彼にはあわず、苦しい時に力になってくれたナターシャの愛に気付いて結婚する。
しかし革命によって「ソ連」へと変わってしまったロシアはラフマニノフには住みにくい場所になってしまい、後に革命の闘士になっていたマリアンナの助けもあってナタ-シャと娘と一緒にアメリカへ亡命し、ピアノ会社社長のフレッドの助けもあって全米をめぐる演奏会は大成功するが、逆にラフマニノフの精神状態は悪くなっていき・・・・といった内容。
アメリカ演奏旅行をするラフマニノフやナタ-シャと過去のそれぞれの登場人物のエピソードが交錯しながらストーリーが展開していく構成であるが、ロシア映画なので当然アメリカでのシーンもみんなロシア語の上、何かそこにいるアメリカ人役の人たちのファッションとか描き方に凄い違和感があってラフマニノフがアメリカに来ている感じがしない・・・・っていくかキャラクター的にいかにもアメリカ人であるはずのヤリ手のピアノ会社社長のフレッド役のオッサンが目つきの悪いスキンヘッドでまるでKGBの恐い諜報員みたいに見えてくるし、恩師の教授や最初ナタ-シャが婚約していたドクターの役の俳優たちもコワモテでロシアン・マフィアみたい・・・・(苦笑)
それから肝心のラフマニノフだが、ずっと険しい顔つきでちょっと恐いし、失墜して夜の町をさまようシーンの不安定さなど映像表現がまるでサイコスリラー映画を見ているようで、そのうち人殺すシーンが登場したらどうしよう?とか変な妄想を生むほど異様な印象を受けた。
またラフマニノフの人生に関わる女性たちについてであるが、妖艶な年上女性アンナやマルクス主義傾倒のちょっと危険な女性徒マリアンナとの出会いによって新たな交響曲が生まれているものの、本当に彼を想い続けて彼に娘と安定をもたらした妻ナタ-シャといた10年には新曲が生まれないという状況はちょっと皮肉っぽい。
まあこのナタ-シャという女も登場シーンから強引に彼に会おうと教授の妹をいいくるめたり、何かとつきまとってストーカーみたいだったが・・・サイコなラフマニノフとある意味ピッタリな女性だったのかも?(笑)
最初予告を見た感じは美しい感じの芸術的映画という印象だったが、実際見てみて全く印象の違うちょっと「変な」映画だったし、ラストも「そこで終わり?」なシメ方でその後彼がどうなったとか全くクレジットもなしで少し中途半端な感じもした。
さすが音楽家の映画だけあって音楽の使い方や映画の所々に象徴的に登場する「ライラック」の花の存在、ロシアの美しい風景などは良かったが、全体としては妙な感じの映画という印象。