ゲキ×シネ「メタルマクベス」 |
今回は2006年に公演され、2007年にゲキ×シネ化されながらも関西での上映がこれまでなかった「メタルマクベス」が遂に上映されるという事で見に行ってきた。
「メタルマクベス」は勿論シェイクスピアの「マクベス」をベースにしてものだが、その伝統的作品を「木更津キャッツアイ」などで知られる人気脚本家「クドカン」こと宮藤官九郎が脚色し、「新感線+クドカン」という異色のコラボレーションがどう作用したのか興味あった作品である。
今から約200年後の未来の日本を舞台にレスポール王の下で戦う勇猛果敢なランダムスター将軍と親友のエクスプローラー。
ある日彼等は3人の魔女に出会い自らの運命が予言されているという80年代のジャパメタバンド「メタルマクベス」のCDを渡される・・・予言はランダムスターが王になると告げており、予言をめぐって彼の運命がどんどん変わっていくのいだが・・・王を殺して国を自分たちのものにしようと夫をそそのかすランダムスター夫人、やがて王を殺し王子に罪をきせて国を乗っ取ったランダムスター、事態に疑惑を抱き、王子を逃がす教育係グレコ、予言で子孫が王になると言われたエクスプローラーなど様々な人物の思惑が交わり、やがてランダムスター夫妻の精神は破綻していってしまう・・・といったストーリー。
基本は確かに「マクベス」なのだが、時代設定や台詞の柔軟さはまるで別物だし、80年代のメタルマクベスと2200年代のランダムスターの話が交錯してストーリーが展開していくという構成は面白かった。
またキャラクターの名前がランダムスター→通称ランディとか80年代のマクベスの恋人の名前がローズなどメタル好きにはちょっと嬉しい味付けがされていたり、レスポール王とかヤマハなど楽器メーカ-の名前が使われてるのもロックな遊びが感じられて面白い。
キャスティングについてはミュージカル「エリザベート」で格好良いトートを演じていた内野聖陽がランダムスターを演じているが、格好良いシーンも当然演じながらも寄り目の変顔とか甘えたしゃべり方、犬の真似まで壊れた感じで演技してたのが面白いし、夫人役の松たか子はさらに普段のイメージとは全く違う悪女&おバカな壊れっぷりでかなりな強烈さ!
それから王子を演じた森山未来も後半登場するハゲ頭ヅラやダンボールと針金で作ったという「海のトリトン」風な異様なヅラなどかなりな変だし、グレコとのホモチックなシーンとかあんまりテレビでは見られないような面白い演技のオンパレードは楽しい♪
それから橋本じゅんや栗根まこと、高田聖子などおなじみの新感線メンバーの演技も楽しませてくれるし、特に橋本じゅんのシーンはかなりな爆笑!
ただ、クドカンの感性なのかいつもより結構下品なシーンが多かった気もするが・・・ゲロとか・・・下品といえば門番の「レースクィーン」と「半ケツ」のギャグはちょっとやり過ぎというか絵的に汚かった気もする(苦笑)
舞台全体の見所としては「メタルマクベス」というだけあって演劇ながらメタルのライブに行ってるような演出が迫力で、特に宮廷おかかえ歌手「冠くん」役の冠徹弥のハイトーン・ヴォーカルで歌う曲の数々はロブ・ハルフォードのような雰囲気すら感じさせるハイトーンの素晴らしさで私的に凄く好みだった☆
内野聖陽たちが歌うメタルマクベスの曲の数々もアイアンメイデンやブラックサバスを連想するフレーズが入っていたりでメタルファンにはたまらないし、ファッションもレザーに鋲とかチョッパーのアメリカンバイクなどメタルに欠かせない要素いっぱいだったり、荒廃した都市のイメージとか昔見て影響を受けた映画「マッドマックス」や「クラス・オブ・1999」、漫画「北斗の拳」などヴァイオレンスでハードな雰囲気も感じられたり本当に私の感性にツボな感じ。
まあ単にハードで暴力的な世界観なら暗い作品になってしまうが、そこは新感線とクドカンだけあってギャグ満載だし、クドカン得意の細かく変なとこにこだわったような台詞回しは中島かずきとはまた違う魅力があると思う。
前に「マクベス」はMETライブビューイングで見たが、思ったほど面白くなかったし、それに比べるとこの「メタルマクベス」の方がエンターティメントとしてずっと上でとことん楽しませてくれた満足出来る作品だったと思う。
