あなたのそばにある異様な話 |
現代妖怪やサイバーゴーストなど都市伝説系の話を漫画にしたものであるが、収録作品としては「注射男」や「渋谷の赤ん坊」、「怪人アンサー」、「一寸ババア」、「杉沢村」、「ベッドの下の男・隙間女」、「ハムスターの幽霊」、「チェーンメール」、「サイバーゴースト」の9編。
「注射男」は口裂け女の話も絡めながら現代における医療に対する不信や不安などが生み出した話という都市伝説に隠された社会問題的な側面を描いてる点は面白いが、このエピソードを担当した漫画の絵がイマイチ好みではない。
「渋谷の赤ん坊」は映画「渋谷怪談」でも描かれたような話も含む現代ならではの都市伝説であるが、この都市伝説の場合、性的に暴走する若者への戒め的意味合いも含むようなエピソードであり、昔言う事を聞かない子供に親が語ったような「戒め的お化け話」が信じられなくなってしまった現代において、新たに派生した怪談なのかもしれない。
「怪人アンサー」も現代ならではの「携帯電話」というツールを使ったエピソードだし、こういうタイプの怪談は新たなツールが出るたびに進化したり、新たに生まれたりするものなのでそのうち今話題のアイフォンなんかをネタにした怪談なんかも出てくるかもしれない。
また、この怪談はある人物が噂の広まり方を調べる実験のために創作したというのが真相らしいが、元は嘘の話でも後の時代になるにつれて本当の話のように伝わったり噂は常に変化していくというのも興味深いと思う。
「一寸ババア」は「渋谷の赤ん坊」と同じく戒め的意味合いの強い怪談であるし、「杉沢村」にしても失われた村落の風習に対する恐怖が生んだ怪談であったり、社会形態の変容によって怪談が生まれる背景も感じられる。
「ベッドの下の男・隙間女」は都市伝説では有名な話だし、「ハムスターの幽霊」はペットという存在が人間社会において大きな存在になっているという認識を感じさせる。
「チェーンメール」や「サイバーゴースト」はネット社会をモチーフにした怪談であるが、相手が見えない形でのコミュニケーションの進化というある意味妙な世界で、その世界観自体が考えようによっては恐怖であり、そういう危うさを含んだ世界であるからこそこういう怪談が生まれたのかもしれない。
収録作としては知ってるような話が多かったし、新鮮味はなかったが、怪談とその社会背景について色々考えたり出来たのは面白かったと思う。
