あなたの知らない未確認生物 |
この本は世界中の未確認生物=UMAをテーマに監修しているオカルト学者・山口敏太郎の独特の視点から考察されたUMA説を漫画化したものであるが、日本の妖怪では有名どころの「河童」をはじめ「スカイフィッシュ」、「ヒバゴン」、「クッシー」、「フライングヒューマノイド」、「ツチノコ」、「タキタロウ」、「がしゃんぽ」、「くねくね」、「アクギョ」、「ヤマピカリャー」、「スケルトンワーム」、「化け熊蜂」など16作品を収録している。
「河童」のエピソードでは河童の生態や種類の他、その正体について外国人説、宇宙人説などこれまで言われていたような説に加え、平家の落武者説というのは初めて聞いた話だったが、そこからさらに平家の人々自体が渡来人だったという説につながったりUMAの話としてだけでなく歴史の話としても実に興味深い話になっていた。
また「スカイフィッシュ」のエピソードではその正体が「虫の誤認説」という一時定着していた説とは全く別に「生物の体は有機物によって出来た肉体にアストラル体=魂が重なって出来ている」という説から最近の環境破壊で減少した虫など小動物の体に入れなかったアストラル体がスカイフィッシュではないかというトンデモ説が展開していて、さらに世界中のUMA自体が古代に滅んだ生物の幽霊という説まで出てきて・・・・かなり突飛ながら目撃情報や映像では残るのに実際UMAの死体が発見されない理由と、見えたり映像に残るが存在が証明できない霊たちの共通点を考えればある意味かなり斬新な説かもとも思ってしまった。
それから「ヒバゴン」に関しては戦時中に飼育係によって山に逃がされた猿が広島原爆で被爆し、その放射能によって変異してしまったものという説も物語としてはありそうでヒバゴンというUMAの地域的な背景を考える上では興味深いのだが、どこからそんな話が出てきたのかはよくわからないし、信憑性は薄そう。
「クッシー」に関しては結論として自然現象でたまに浮かんでくる倒木なんていう夢のない説が展開されていたが、私的には生物がいると考えた方が楽しいし、「オバQみたいな顔だった」という目撃情報もあるので倒木説は否定したい。
それにしてもUMAの顔の目撃情報ってツチノコの時にしても「ドラえもんみたいだった」とか何故か藤子不二雄先生は大人気???(笑)
「フライングヒューマノイド」のエピソードでは未確認生物ではなく人体装着型ロケットを付けたアメリカかどこかの国の特殊工作員が新型ウィルスなど散布実験をしてるという説は、一見胡散臭いこういったUMAという存在を隠れ蓑に利用し、政府が陰謀を遂行しているというのは有り得そうだし、世界で目撃される数々のUMA情報のうちのいくつかは何らかの陰謀と関係していると考えたらちょっと怖い。
「ツチノコ」のエピソードではこれといって新しい説は展開してなかったが、縄文土器の中にツチノコに似た紋様があるような話も含まれていて、本当にそんな紋様があったのかどうかは少し興味をそそる。
巨大魚の群れである「タキタロウ」は奇妙な生物や古代生物というわけではないので普通に存在していそうだし、「がしゃんぽ」は「河童」と同じく歴史的背景と絡んだUMAで、そういう時代や風習、地域によってそこに生きる人々が生み出したこういうUMAは「生物」としてのUMAとはまた違う面白さがあると思う。
なので「くねくね」のエピソードは昔の妖怪などに近いルーツはあるものの、現代における人々の闇が生み出した新たなるUMAだし、時代が変わるに連れて今後そこから発展してさらなる「何か」に変わっていく要素も秘めている感じもする。
「悪魚」とよばれる巨大魚のエピソードでは古代魚ダンクルオステウスだという説になっていたが、話の展開のさせ方として自称天才思い上がったオッサン科学者とバカ過ぎな助手のキャラクター設定の意味不明さがワケわからん感じで・・・・変な漫画だった(苦笑)
「スケルトンワーム」のエピソードも話自体は大した事なかったが、透けた蛇のような体に歯のない口があって尺取虫みたいな動きをし、時には威嚇音を出したりするという奇妙さに興味が湧いたし、排水溝など汚い水場によくいるという事は汚染物質による突然変異と考えられたり、最近の中国の有毒物質の騒動とか考えたらこういう変種が生まれていても不思議ではないし、存在してそうだと思った。
「化け熊蜂」の話では明治期に目撃され、仕留められたという2m近い巨大熊蜂らしいが、これは実はアメリカで目撃されるという「モスマン」だったのではないかという説は面白かった。
不吉の前兆であるというモスマンが北京で目撃されたなんて話も載っていて、この本の発行が今年の1月であるからその後起こったチベット問題や四川大地震、聖火騒動、最近の爆破テロなど考えればその不吉の予兆も当たっていたのかもしれない・・・。
他には直接UMA自体をメインにしてない話もいくつか収録されており、水曜スペシャル探検隊の川口浩や番組の制作者たちは現地では神と崇められているものもあるUMAを面白半分にヤラセ満載で扱ったため、その後の数々の不幸はUMAの呪いだったなんていう話とか(川口浩自身がUMAみたいな扱いになってたのには笑えた)、人魚や河童など「化け物ミイラ」を作っていた人間にまつわる怖い話、山口敏太郎が色んなUMA料理を食べさせられて大変な目に遭うが実は夢だったという変なエピソードとか、世界の類人猿系UMAを戦わせたらどうなるかという企画、1ページずつUMAを紹介するページなど妙なのもあわせて色々載っており面白いものもあった。
特にUMA紹介ページに載っていた蛇蛸とか野守虫、印旛沼の怪獣などはもっと掘り下げて知りたい感じだったし、漫画含めて全体的に絵の質はあんまり好みではなかったものの、氷厘亭氷泉の昔の妖怪画のような和風テイストと現代的アレンジや装飾感がうまく合わさった絵柄は結構印象に残った。
まあいい加減な記事も多かったが意外な説とか知らないUMAも色々載ってたし、本としてはわりと楽しめたと思う。
それにしても何で表紙は「河童になった新垣結衣」なのかは謎・・・・。
