2008年 10月 27日
宮廷画家ゴヤは見た |
「アマデウス」のミロス・フォアマン監督の新作「宮廷画家ゴヤは見た」を観た。
18世紀のスペイン、スペイン最高の画家と称えられるゴヤは教会の実力者であるロレンソ神父の肖像画を描いていたが、ロレンソはある日、ゴヤが同じく制作していた美しい少女イネスの肖像画に目をとめその美しさに惹かれる・・・・やがて異端審問を強化しようと行動を始めたロレンソは密告によってユダヤ教信者の疑いをかけられたイネスを捕らえ酷い拷問によって自白をさせるが、大商人であるイネスの家族も反撃に転じ、自らの屋敷にロレンソを監禁、拷問して「拷問による自白」の証拠としての無意味さを証明、それによって教会に恥をかかせたロレンソは追われる身となり逃亡するが、イネスは解放される事はなかった・・・・しかし15年後スペインにナポレオン軍が侵攻し状況は一変していって・・・というようなストーリー。
権力の座を欲望に利用するも自らの立場によって信条を簡単に変えるという神父ながら悪党なロレンソは人間の嫌な部分や弱い部分をうまく表したキャラクターだし、彼の存在によって人生を狂わされてしまった純粋無垢だった少女イネスの悲劇的な人生やこの二人の運命がナポレオンの侵攻によって再び動き始めるという展開などとてもドラマティックなストーリーを「ゴヤ」という特異な画家の目を通して描くという見せ方はなかなか見ごたえがある。
単に美しいものを求めるような同時代にいた多くの画家と違って、醜さも残酷さも隠す事無く真実を描こうとするゴヤが過ごしたスペイン激動の時代は異端審問、差別と貧困、戦争などまさに彼が描いた「黒い絵」のような悪魔や魔女が蠢く地獄そのもののように思えるし、異端審問に関しては数代前まで遡ってユダヤ系かどうか調査するなどカトリック教会がこの時代から既にナチスのような事をやっていたという事実とか一見革命と解放を宣言するナポレオン軍がやっている蛮行など人間の主張する正義なんてものは一歩間違えば「狂気」でしかない気もする。
ロレンソを演じたハビエル・バルデムは「ノーカントリー」の殺し屋役で強烈な印象を残した俳優であるが、この作品でもまた違った「悪」の姿を巧みに演じていたし、心底悪党でないという人間味の描き方も面白い。
またイネスを演じたナタリー・ポートマンは拷問と長い牢獄生活によって口は歪み精神に異常をきたすというこれまでの小綺麗な役とは全く違う衝撃的な役柄には驚かされた。
内容的にドラマティックで深いというだけでなく様々なゴヤの作品も登場したり彼の制作風景の再現とか美術好きにも楽しめる作品にも仕上がっていたと思う。
18世紀のスペイン、スペイン最高の画家と称えられるゴヤは教会の実力者であるロレンソ神父の肖像画を描いていたが、ロレンソはある日、ゴヤが同じく制作していた美しい少女イネスの肖像画に目をとめその美しさに惹かれる・・・・やがて異端審問を強化しようと行動を始めたロレンソは密告によってユダヤ教信者の疑いをかけられたイネスを捕らえ酷い拷問によって自白をさせるが、大商人であるイネスの家族も反撃に転じ、自らの屋敷にロレンソを監禁、拷問して「拷問による自白」の証拠としての無意味さを証明、それによって教会に恥をかかせたロレンソは追われる身となり逃亡するが、イネスは解放される事はなかった・・・・しかし15年後スペインにナポレオン軍が侵攻し状況は一変していって・・・というようなストーリー。
権力の座を欲望に利用するも自らの立場によって信条を簡単に変えるという神父ながら悪党なロレンソは人間の嫌な部分や弱い部分をうまく表したキャラクターだし、彼の存在によって人生を狂わされてしまった純粋無垢だった少女イネスの悲劇的な人生やこの二人の運命がナポレオンの侵攻によって再び動き始めるという展開などとてもドラマティックなストーリーを「ゴヤ」という特異な画家の目を通して描くという見せ方はなかなか見ごたえがある。
単に美しいものを求めるような同時代にいた多くの画家と違って、醜さも残酷さも隠す事無く真実を描こうとするゴヤが過ごしたスペイン激動の時代は異端審問、差別と貧困、戦争などまさに彼が描いた「黒い絵」のような悪魔や魔女が蠢く地獄そのもののように思えるし、異端審問に関しては数代前まで遡ってユダヤ系かどうか調査するなどカトリック教会がこの時代から既にナチスのような事をやっていたという事実とか一見革命と解放を宣言するナポレオン軍がやっている蛮行など人間の主張する正義なんてものは一歩間違えば「狂気」でしかない気もする。
ロレンソを演じたハビエル・バルデムは「ノーカントリー」の殺し屋役で強烈な印象を残した俳優であるが、この作品でもまた違った「悪」の姿を巧みに演じていたし、心底悪党でないという人間味の描き方も面白い。
またイネスを演じたナタリー・ポートマンは拷問と長い牢獄生活によって口は歪み精神に異常をきたすというこれまでの小綺麗な役とは全く違う衝撃的な役柄には驚かされた。
内容的にドラマティックで深いというだけでなく様々なゴヤの作品も登場したり彼の制作風景の再現とか美術好きにも楽しめる作品にも仕上がっていたと思う。
by lucifuge
| 2008-10-27 19:33
| 映画/洋画