The Fantastic Art of Beksinski |
この画集は洋書でMorpheusというところから出版されている「The Fantastic Art of Beksinski」というものであるが、表紙からして無数の骨のような手を使い管楽器のようなものを吹く異様な人間のような物体が描かれ、何か奇怪な音楽でも聴こえてきそうな不気味さが漂う強烈さがあるが、中身はもっと様々な異様な世界が展開されておりさらに面白い!
変形し崩れたような人間の顔のような鉛筆画をはじめ、メインである彩色された作品も骨か蜘蛛の糸のような複雑な構造のみを剥き出しにした感じの建造物が存在していたり、墓や廃墟をイメージするような破滅感が漂う奇怪な風景、そんな独特のタッチでべクシンスキー的世界に取り込まれた車や旧式バイクは全て怪物のような変貌を遂げ、人の形のようで人間ではない異様な生物がいたり、ここは地獄か人類滅亡後の世界とも思わせるおぞましさと宗教的な神聖さも感じられる不思議な世界には圧倒された。
最近の私自身の絵に関しては少しこれまでの作品とは違う要素であるアリス的世界観や美少女、天使、猫やウサギなどのカワイイ動物、過剰なゴシック風装飾など新しいものを取り入れて新しい世界を表現しようとする事ばかりに気を取られてしまっていた感があるのだが、個展で様々な意見を聞いてみると私がこれまで本来描いてきたものの中心である奇怪な生物をメインにしているものの方が魅力的に感じられたようだったし、べクシンスキーの絵を見ていると何も美少女やカワイイモチーフ要素がなくても(けっして一般的に言われる美しい要素がなくても)おぞましいながら美しく魅力的であるし、それは画家の確固たる世界観によって確立された面白さと魅力(ここまでくると魔力ともいえる)であるのかもしれない。
なので私のこれからの作品方向としては今回新たに取り込んだ要素も描きながら楽しいものだったし排除する必要はないが、全ての作品にこの要素は必要とという描き方をするのではなく、私の考えた世界の中に自然な形で必要と思えるならば入れていくような自身の感覚にもっと素直に描いていければと思う。
この画集は私のこれからの作品にプラスになってくれそうな事を色々感じさせてくれた重要な1冊だった。
