カルトの泉~オカルトと猟奇事件 |
この本は海外・国内のカルト的要素を持った様々な異様な事件を取り上げ、考察したものであるが、主に漫画で解説されているのがわかりやすく読みやすい感じ。
内容としては「定説です」で世間を騒がせた「ライフスペース事件」、「酒鬼薔薇事件」、「美人占い師殺害事件」、「津山三十人殺し」、「イタコ信仰憑きもの落とし殺人事件」、「死なう団事件」、「右目のキリスト 悪魔殺し殺人事件」、「霊命教聖地殺人事件」など国内のものから「シャロン・テート殺人事件/ジョン・レノン殺人事件」、「サムの息子殺人事件」、「ヘヴンズ・ゲート集団自殺事件」など海外のものまで幅広く扱っている。
中でもサムハラ神社にまつわる「祟り」と因縁めいた不思議さを感じさせる「津山三十人殺し」の話はこれまで知らなかったし意外で興味深い。
また「酒鬼薔薇事件」に関しては最近読んだ「怪奇事件はなぜ起こるのか」によると真犯人説自体が揺らいでしまうものの、真犯人という前提で事件を分析したこの本の場合では酒鬼薔薇が自ら作り出し信仰していたという「バモイドオキ神」が1字ずつとばして読むとバイオ+モドキになり、彼にとっての他人は生命感が希薄な偽者の存在だったという分析は面白いし、大げさな猟奇的事件ではなく単にお婆ちゃん子が成長出来ずに弱い者いじめしただけの低能な事件という結論もなるほどと思わせる。
そして昭和の政財界を操ったといわれる占い師藤田小女姫にまつわる「美人占い師殺人事件」のオカルトを利用した国家操作の裏側というのは世間で超越的な力と信じられているものがいかに世間を動かすために捏造された存在であり、それによって人々は流されるのかと考えたら今の世の中でも同じような占い師やスピリチュアルな有名人が思い浮かんでくるが、そうすると彼らの背後にも何かある気もしてくる。
「死なう団事件」、「右目のキリスト」、「女祈祷師信者6人殺害事件」、「霊命教聖地殺人事件」など宗教に対してのカルト的傾倒によって起こされた事件など一見世間からすれば常識外れな彼等の行動が何故そうなるのかという分析は「カルト」というものの本質をわかりやすく解説されてたし、国家というものの存在自体にカルトの要素があるという事実は意外ながら納得もいく。
内容的には結構深刻で恐ろしく残虐な事件を扱いながらも唐沢氏の独特な持論の展開とソルボンヌ氏のカワイイ絵柄の面白おかしい漫画は逆に笑えたりでブラックながら楽しめた1冊だった。
