ダイアリー・オブ・ザ・デッド |
山奥で卒業制作のためホラー映画を撮っていた大学生たちと教授は死者が突如として甦り人を襲い始めて町が混乱していっているというニュースを知った事から、連絡がつかない家族が心配なのもありキャンピングカーに乗り合わせ、家を目指して走る・・・・そんな中生徒の一人ジェイソンは後の世界のためにこの怪現象を全て記録しようとビデオを回し続けるが・・・・といった内容。
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」でそれまで魔術で生き返った死体という感じだったゾンビのイメージを人肉を求めてフラフラ動き脳を破壊しない限り倒せないという新たな発想で変革し、ホラー映画史にも多大な影響を与えたジョージ・A・ロメロ監督はその後「ゾンビ:ドーン・オブ・ザ・デッド」、「死霊のえじき:デイ・オブ・ザ・デッド」と続編を作り、さらに2005年「ランド・オブ・ザ・デッド」で復活、そして今作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」ではこれまでとは違う視点で「ゾンビ」に迫っているのが面白い。
これまではゾンビの発生によって滅んでいく世界をゾンビと戦い直接関わるような、そこに生きる様々な人間たちの生々しい視点で描いていた感じだが起こった現象に対して「カメラ」を通した視点がいかにも今の時代を反映しているし、ストーリー的には「ナイト・オブ~」と「ゾンビ」にまたぐくらいの時間軸の出来事ながら今の時代に実際にこういう事態が発生した場合の混乱によって荒廃していく人間たちの心や行動がリアルに描かれていて面白かった。
またこういう映画では普遍的テーマでもある「もし友人や恋人、親兄弟がゾンビになってしまったら?」とか「それまで<人間>だった存在を非情に殺せるのか?」という苦悩や究極の決断など「ゾンビ」を描きながら何より「人間」を描いた映画であるというのが凄く深いし、レンタルDVDのみで出てるような安物ゾンビ映画にはないロメロの独創性と重みを感じさせる秀作だった。
それからテーマや内容の深みだけではなく勿論「ホラー」としての面白さもしっかり盛り込まれており、ゾンビならではの「集団性」の恐怖や脳天が吹っ飛ぶスプラッターシーンの見せ場も派手に見せてくれて楽しかったし、何といっても学生とともに戦う教授のキャラクターが最初は暗くて酒飲みというパッとしない感じながらストーリーが展開するに連れて実は軍隊経験があり銃だけでなく弓矢も使いこなしゾンビをバッタバッタと倒していく様は痛快で格好良かった☆
しかしながらラストで映っていた映像は「ゾンビなんかより怖いのは人間」と思わせる「狂気」を感じさせるものだったし、本能で殺戮するゾンビよりも快楽で殺戮出来る生きた人間こそが怪物なのかもしれないとも思った。
