K-20 怪人20面相・伝 |
日本が英米と平和条約を締結し、第二次世界大戦が起こらなかったという架空の世界における1949年の「帝都」を舞台に19世紀から続く華族制度によって一部の特権階級による富の独占が極端な格差社会と化す状況の中、「怪人20面相」と呼ばれる怪盗が出現し富裕層を標的とした奇想天外な盗みを繰り返しており、名探偵である明智小五郎と助手の小林少年が彼を追っていた・・・・・一方サーカスの曲芸師である平吉はある日カストリ雑誌の記者から明智とその婚約者である羽柴財閥の令嬢葉子の結納の様子を写真に撮ってほしいと依頼されるが、それは実は20面相の罠だった・・・といったストーリー。
20面相に間違われ、濡れ衣をきせらた平吉が自らの無実を証明するために動いていく過程で、サーカスの仲間だった実は泥棒のカラクリ師である源冶やその妻である詐欺師の菊子と長屋の泥棒仲間たちとの協力、20面相への手がかりを追う中で関わる事になった羽柴財閥の令嬢葉子とのラブロマンスを匂わせる関係、そして最初は平吉を疑いながらも協力する事になる明智小五郎などキャラクターの性格や関係性がわかりやすく描かれているのはマンガ的な印象。
また平吉が長屋の泥棒たちに伝わる秘伝書を使い、その修行によって自らの能力を高め、超人化していく様子はまさに少年漫画で定番の面白さの要素で80年代の「少年ジャンプ」で育った世代には楽しかったり(平吉と葉子の階級を越えたロマンス的要素は少女漫画的だが)、本来の乱歩的世界のドロドロした怪しさは無いながら、私が小学生の頃読んでいた子供向けに書き直された乱歩の「少年探偵団」シリーズのイメージに近い「冒険」や「ミステリー」をメインにしたワクワクさせる展開はわりと良かったと思う。
それから物語の核となる羽柴家がどこかに隠しているという天才科学者「ニコラ・テスラ」が開発した「無線送電システム」の存在やそれにつながる謎を解く面白さとか(謎を解く鍵のひとつとしてパズルボックスが登場するのは私が好きな映画「ヘルレイザー」に通じる感じもあって嬉しい)、設定要素のひとつとして「格差社会」など現代にも通じるテーマで社会派的なものを感じさせる部分もあったり、全編にまたぐ豪快なアクションの数々は娯楽作品として素直に楽しめたし、前近代的でありながら未来的でもあるファンタスティックな都市の光景、「多重人格探偵サイコ」の田島昭宇がデザインした20面相のコスチュームデザインなど映像やデザインの面でもなかなか良かったと思う。
それから平吉を演じた金城武、葉子を演じた松たか子、明智を演じた仲村トオルといった主演陣に加え、源冶を演じた國村隼、波越警部を演じた益岡徹など脇役陣もいい味が出てたし、特に小林少年を演じた本郷奏多は異様にツングース爆発事件に執着していたり奇怪な笑みが印象的で本来正義の側であるはずの役が妙にワルそうな怪しさがあって「こいつの正体は何?」と思わせた。
結局劇中では小林少年に関しては何も怪しい事実は出てこないがあの表情の持たせ方は続編があった場合何か意味があるのかも?
それに葉子をさらおうとオカマっぽい服職人に変装した20面相の役を嶋田久作がやっていたが、嶋田といえば「帝都物語」の加藤保憲役のイメージがあまりにも有名だし、舞台が同じ「帝都」の名称をつかっているという事で登場したのか?とかちょっとした遊びも感じられたのも楽しかった。
クライマックスでは20面相の正体についても意外な真相が明かされるが、途中で大体読めていたのでそれほど驚かなかったながら、あのパターンは確かに今まで誰もやらなかった盲点かも?
しかしラストシーンに至っては20面相というか「バットマン」そのままだったし(笑)、部分部分見ればちょっと色んな映画のパクリっぽいイメージのつぎはぎのような所もある気もするが全体的には娯楽として結構楽しめる映画だったと思う。