アラトリステ |
17世紀のスペイン。その強さゆえ「隊長(カピタン)」の異名でよばれる凄腕の剣客アラトリステはスペイン軍歩兵連隊の兵士として各地で戦ってきた歴戦の勇者であり、戦争から離れている時期は金で殺しを請け負う「刺客」としても仕事をしている・・・・アラトリステは戦死した戦友の息子イニゴを引き取り世話していたが、そんな彼に教会からの極秘任務として異端者の英国人2人を殺して欲しいという依頼があり、イタリア人の殺し屋とともに遂行にあたるが、何か違和感を感じたアラトリステは殺害をやめた事から事態は思わぬ方向へ動いていく・・・実は彼等が襲った英国人は英国皇太子とバッキンガム侯爵であり事件の裏には英国のプロテスタントを憎悪する異端審問所の陰謀が隠されていた・・・といったストーリー。
この映画の宣伝から観る前の作品イメージとしてはもっとスタイリッシュなアクションと中世スペインの豪華なコスチューム、英雄譚的な豪快なストーリーなどを想像していたものの、主人公アラトリステは確かに強いが華麗に無敵というわけではなく戦いもボロボロになって何とか勝ってる感じだし、そういうのはある意味リアルなのだが、普段は義に厚いながら友人の妻と浮気してたり(その時点で義に厚いのは疑わしい)英雄というにはちょっと納得いきかねる設定とか、その人妻の夫が亡くなるから次は自分が結婚しようと思いきや、女性は国王に見初められ愛人になってしまい、それでも愛を貫こうとするというパターンも一見純愛ながらベースが不倫なのでイマイチしっくりこないし、対してイニゴと恋に落ちる国王付き秘書官の娘アンへリカのエピソードは陰謀や悲恋ネタも絡んでいたりわりとうまく構成されていたながら、映画1本の中に戦争や暗殺、陰謀、異端審問、男の戦い、ラブストーリーなどあまりにも色んな要素や話を入れ過ぎている感じで全体的にちょっとバラバラした印象だったし、話の見せ方や展開が下手というかダラダラな感じで正直観ていて2時間半はちょっと疲れた。
戦争シーンのアクションにしてもそれなりに多くの人とか手間をかけてながら見せ方がマズイため「レッドクリフ」なんかに比べるとまるで拍子抜けな感じだったし、スケール感のある長く壮大な話ながらちょっと物足りない。
しかしながら少人数での剣の戦いシーンはなかなか面白く迫力があったし、個別の殺害シーンは結構リアルに残酷だったり一部のシーンは印象的で良かった。
こういう乾いた生々しさというか綺麗事を描こうとしないのはスペイン映画のセンスとして好きな所であるし、去年観た「宮廷画家ゴヤは見た」とも通ずるような残酷でダークなイメージに関しては好きな感じ。
またベラスケスなど当時のスペイン画壇を代表する画家の作品がちょっと登場したりアート的にもちょっと楽しめる。
主演のヴィゴ・モーテンセンは「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン的イメージとはもう全く違う、どちらかというと「イースタン・プロミス」のロシアン・マフィア系のバイオレントなイメージで無愛想なヒゲ面は風貌的にはかってのニック・ノルティを連想させたり、こういうワイルドなイメージがここまで似合うのなら今度はヘルズ・エンジェルズ系のアウトロー・バイカー役なんか演じたら面白そう!なんて事も思った。
