誰も守ってくれない |
小学生の姉妹殺害容疑で逮捕された18歳の少年・・・逮捕により少年の家族までもマスコミと大衆のバッシングの対象にされ、加害者家族の保護の任務を命令された勝浦刑事は少年の妹である沙織を連れてマスコミや大衆から守ろうとするが・・・・そんな中家宅捜索中に現実に絶望した母が自殺し、ネットには家族の個人情報ばかりか勝浦刑事の個人情報まで載せられ、リアルタイムで沙織の行方を暴かれていき・・・・といった内容。
犯罪における被害者と加害者という重いテーマ性や犯罪によってそれまでの日常が一変して壊れてしまった加害者家族というこれまでとりあげられなかった部分に焦点を当てているのは興味深い。
それにしても「遺族は加害者家族全員に死んで償えと思っている」と言い切る記者とか、執拗に取材しようとするマスコミ、ネットで「正義」という建前のもとに加害者家族の個人情報を暴き、好き放題誹謗中傷する一部のネット住人など「犯罪」という悪の要素を利用して必要以上に攻撃する無責任で非情な大衆とマスコミの姿はこっちのほうが狂気じみているのではないかと思ってしまう。
確かに犯罪を犯した本人は悲惨な目にあっても自業自得だし、むしろ守られず酷い目にあうべきだと思うが、その家族は家族だったというだけで何もしてないわけだし、そこまで攻撃する必要がどこにあるのか?と思う。
まあ本当に犯人と同類みたいな腐ってる一部非難されるべき加害者家族も当然いるとは思うが全部が全部そうじゃないだろうし、攻撃する人々というのは「犯罪」を理由に普段の自分のストレスの捌け口にこういった加害者に関係する人間をスケープゴートにして楽しんでいるようにも思える。
しかもこういう事件というのは当事者にとっては一生苦しみ続ける事ながら散々追いまわしておいてある期間が過ぎ、また違う新たな事件が起きてしまったらもう前の事件には飽きてマスコミやネット攻撃の連中はもう忘れてしまうという無責任さだし、この映画の場合では警察にしても事件を利用して自らの地位向上を狙ったり、加害者家族に対する偏見に満ちた接し方、主人公沙織に至っては恋人にまで裏切られたり本当に「誰も守ってくれない」絶望的な状況は恐ろしくもあり人間の嫌な部分や弱い部分を色々見せつけられた気もする。
でもそんな状況の中で必死に沙織を守りぬく勝浦刑事や次第に成長し心を強くもっていく沙織の姿は人間の強さを希望も感じさせたり、娯楽的楽しみ方は出来ないがメッセージ性の強い社会派映画だったと思う。
ただ結構重い内容なので観ていてちょっと疲れてしまったが・・・・。
重苦しい内容ながら劇中流れるロンドンの少年合唱団「リベラ」の歌声は凄く清らかで美しく癒された。