恐怖箱 超-1怪コレクション 夜明けの章 |
「まえがき」によれば前巻「黄昏の章」は万人が怖いと感じる話を集めたのに対してこの巻では誰かにとってとてつもなく怖い話は他の人には大して怖くない話かもしれないといった意見が分かれるタイプのひとクセある話を集めた感じらしい。
内容としては借金苦で裏社会御用達タクシーの運転手をしていた人の妙な体験「貸切り」、結婚式にまつわる怪異話「婚礼」、ヴィジュアル的に想像したら不気味な「地下駐車場」、日常の一瞬の体験ながら後が残る不可思議さの「嫌っ」、志村けんがコントでやりそうななネタだが、実際だったらかなり驚く「ポケット」、意味不明だが気になる「岡持ち」、交通事故の影にある異様なつながりを感じさせる「赤い糸」、その体験者の立場なら記念写真を撮るのが滅入ってしまう「ピースサイン」、霊も物を食べるのかと思った「つまみ食い」、何で霊のその部分だけが大きかったのか背景を考えてしまう「左手」、霊も困るというちょっとユーモラスな「近所迷惑」、ギャグ漫画みたいな変態ビジュアルの霊が笑える「自粛」、ラストの霊の姿を想像するとかなり不気味だし、何でそんなポ-ズになるのか本当に不可解な「にゃ~おん。」、臨死体験にまつわる奇妙な話「白黒」、「お花見」、親族の死にまつわる妙な現象「大福」、「挨拶」、幽霊にも不眠症があるのかと思わせる「不眠症」、霊って掃除機で吸えるのか?と不気味ながらちょっと滑稽だった「掃除機」、映画の1シーンみたいな「エレベーター」、ジャガイモから出た謎の血液がB型だったという変な話「マイペース」、顔のあった梅干って一体どんな美味しさだったのか気になる「具」、まんが日本昔話を連想してしまった「ぐぐぐっ、びょーん」、一体その家は何だったのか色々想像してしまう「果物」、台詞のオチが漫才みたいにウマイ「うっかり」、霊とルームシェアするというのが面白い「暗黙の了解」、得体の知れない怖さが残る「早く出てって」、クレーム電話をする霊というのも何か生きてる人間並みに人間臭く感じる「おかしい部屋」、都市伝説的な「横顔」、河童の目撃談として一風変わってて面白い「水の中に」、悪魔という存在の取引が案外地味で実用的なのがコミカルな「取引」、罰当たりの様子がリアルに描かれる「近付いてくる」、人知を超えた力の対決が面白い「神対決」、貝殻と異様な女の関係と謎の言葉が気になる「はらさっ!!」など70編あまりの実話怪談が語られている。
特に私が面白かったのは「神対決」でフィクションの世界ではよく使われるようなネタながら今まで読んだ実話系の話でこういうのは初めてだったし、こういう事は人間の目に見えないながら、日常として超越的存在が誰かを脅かしたりそれから守ったりというような攻防戦を繰り広げてるのかもしれない。
また「はらさっ!!」に登場する女は霊というより何か妖怪っぽかったし、妖怪といえば「水の中に」の河童のヴィジュアル描写はグレイタイプの宇宙人にも共通しているようなイメージもあったり興味深かった。
今回の本としては私的には怖いというよりケンケンパをして遊ぶ霊、クレーム電話をする霊、変なオッサンの霊、掃除機に吸われてしまう霊など霊の意外な一面というか、ちょっとコミカルに思える姿を垣間見るような不思議な面白さがある作品が多かったし、それはそれで結構楽しめた。