2009年 02月 05日
夢の木の下で |
諸星大二郎の漫画「夢の木の下で」を読んだ。
ツーライとよばれる異界の地を舞台にモボクとよばれる植物と共生しながら生きる人々を描いた表題作「夢の木の下で」をはじめ、様々な異界を旅する男を主人公にした「遠い国から」のシリーズ4編、それから壁の中に棲む人間のような連中の生活を描いた「壁男」シリーズ3編、企業の一室に昔から祀られている「神様」の世話をまかされた男の顛末を描いた「鰯の埋葬」といった感じの内容。
「夢の木の下で」は諸星が得意とする独自の設定の異界の姿が巧みに描かれており、モボクとともに人が眠る時は人はモボクの夢を見てモボクは人の夢を見るという「夢の交換現象」が起こる事や、壁で囲まれた同じような狭い世界が連なり、それを超えてきた男の出現によって変化していく状況などSFやファンタジーの物語ながら凄く哲学的な部分も感じる。
また「遠い国から」のシリーズではまるでシュールレアリズムの絵のような不可解で幻想的なイメージを具現化したような世界が広がっており、ガラクタの国に住む人々の話やカオカオ様の話、ナルム山の話など何かを象徴するような各国の奇怪な風習とか奇妙な人間の姿、異様な話の展開ながら何か深いものを感じたり、最後にはモボクの世界にも話がつながっていたり読んでいる中でその壮大な世界設定と長い歴史の流れに飲み込まれるような不思議な感覚になってくるし、この「諸星的神話世界」の中を旅したような気分になった。
それから一変現代的な世界観の「壁男」を読んだが、この「壁男」も「壁」という閉ざされた世界からこういう発想をして、さらにそこにかって人間だった存在が混じることによって起こる変化と混乱、終局を見事に描いていてこれは言うなれば「諸星版都市伝説」といったところだろうか。
この「壁男」は映画にもなっているらしく、一体どんな風に映像化したのか気になるが下手に作ればよくある大した事ないただの都市伝説ホラー映画になりがちだし、諸星的な独特の世界観や雰囲気を壊さず作っていて欲しいと思う。
またレンタル屋で探してみよう♪
ラストの「鰯の埋葬」も現代を舞台にした怪奇譚だが、「会社」という巨大な存在の中に隠されたいびつながら力を持った存在に遭遇し、取り憑かれていく男の末路を描いているが、超常的要素に加えサイコ的要素の不気味さ、巨大化してしまった「会社」という存在の持つ得体の知れなさとかちょっとシニカルなメッセージも感じさせる「諸星流怪談」だった。
前半と後半で全く趣向の違う世界観で構成された本だったがどれもまぎれもない諸星大二郎らしさが感じられる作品だったし、満足出来る1冊だった。
ツーライとよばれる異界の地を舞台にモボクとよばれる植物と共生しながら生きる人々を描いた表題作「夢の木の下で」をはじめ、様々な異界を旅する男を主人公にした「遠い国から」のシリーズ4編、それから壁の中に棲む人間のような連中の生活を描いた「壁男」シリーズ3編、企業の一室に昔から祀られている「神様」の世話をまかされた男の顛末を描いた「鰯の埋葬」といった感じの内容。
「夢の木の下で」は諸星が得意とする独自の設定の異界の姿が巧みに描かれており、モボクとともに人が眠る時は人はモボクの夢を見てモボクは人の夢を見るという「夢の交換現象」が起こる事や、壁で囲まれた同じような狭い世界が連なり、それを超えてきた男の出現によって変化していく状況などSFやファンタジーの物語ながら凄く哲学的な部分も感じる。
また「遠い国から」のシリーズではまるでシュールレアリズムの絵のような不可解で幻想的なイメージを具現化したような世界が広がっており、ガラクタの国に住む人々の話やカオカオ様の話、ナルム山の話など何かを象徴するような各国の奇怪な風習とか奇妙な人間の姿、異様な話の展開ながら何か深いものを感じたり、最後にはモボクの世界にも話がつながっていたり読んでいる中でその壮大な世界設定と長い歴史の流れに飲み込まれるような不思議な感覚になってくるし、この「諸星的神話世界」の中を旅したような気分になった。
それから一変現代的な世界観の「壁男」を読んだが、この「壁男」も「壁」という閉ざされた世界からこういう発想をして、さらにそこにかって人間だった存在が混じることによって起こる変化と混乱、終局を見事に描いていてこれは言うなれば「諸星版都市伝説」といったところだろうか。
この「壁男」は映画にもなっているらしく、一体どんな風に映像化したのか気になるが下手に作ればよくある大した事ないただの都市伝説ホラー映画になりがちだし、諸星的な独特の世界観や雰囲気を壊さず作っていて欲しいと思う。
またレンタル屋で探してみよう♪
ラストの「鰯の埋葬」も現代を舞台にした怪奇譚だが、「会社」という巨大な存在の中に隠されたいびつながら力を持った存在に遭遇し、取り憑かれていく男の末路を描いているが、超常的要素に加えサイコ的要素の不気味さ、巨大化してしまった「会社」という存在の持つ得体の知れなさとかちょっとシニカルなメッセージも感じさせる「諸星流怪談」だった。
前半と後半で全く趣向の違う世界観で構成された本だったがどれもまぎれもない諸星大二郎らしさが感じられる作品だったし、満足出来る1冊だった。
by lucifuge
| 2009-02-05 22:16
| 本/漫画