2009年 04月 05日
私家版魚類図譜 |
諸星大二郎の漫画「私家版魚類図譜」を読んだ。
以前同じ諸星作品の「私家版鳥類図譜」というのを読んだが、その第2弾として諸星氏が「魚」をテーマに自由に思い描いた様々なストーリーが収録されている。
収録作品としては諸星版人魚姫とでもいうべき「深海人魚姫」、ちょっとラブクラフト的世界を思い出した「鮫人」、異形の進化を遂げた諸星的未来世界を描く「魚が来た!」、魚の持つ特性を妖怪的テイストな面白さで見せる「魚の学校」、日常生活の違和感と魚のイメージを独特の視点で融合させたような「魚の夢を見る男」、海にまつわる人々の間で噂される謎の女性をめぐる不思議な話「深海に還る」、魚の生態を面白おかしくギャグ的に紹介した「ネタウナギ」の7編が載っている。
「深海人魚姫」はおとぎ話的世界設定ながら妙な生き物とか深海人魚たちの独自の生態設定など諸星らしさがよく出ている作品だったし、「鮫人」は諸星が得意とする中国歴史モノのパターンを使いながらも異界の住人との遭遇という点で別パターンの「人魚姫」譚にも思えたり、「魚が来た!」は科学の進歩で現在のような「生きた魚」が認知されていないというある意味異常な状況が普通な社会という特異さとかロボットの魚を使って楽しむ「釣り」、迷路のような地下のどこか先にある「海」への幻想など退廃的だが夢も残すような不思議な世界観は凄く好きな感じ。
「魚の学校」はこれまた全くカラーが違う不思議話で途中「白鯨」のエイハブ船長や預言者ヨナ、ピノキオが出てきたりする展開とかどこ軽いオカルトチックなノリは同じ諸星作品の「栞と紙魚子」シリーズに近いような奇妙でコミカルな世界で読んでいて楽しい☆
「魚の夢を見る男」はこの本収録の話の中で内容的に一番ダークともいえる作品だがヴィジュアルイメージ的にマグリットの絵「共同発明」を連想するようなものだったり妄想や幻想、悪夢の断片的イメージの中で展開される話はどこか不気味さと孤独感、虚しさがじわじわ迫ってくるような作品だった。
「深海に還る」は最初はどんな話かと油断して読んでいたら実はこの本の中のあるエピソードの続編だという事がわかってきて驚かされたり諸星なりの話の終わらせ方もしみじみと余韻が残る感じで良かった。
「ネタウナギ」は書き下ろしのオマケ漫画だが深海に棲む奇妙な生物の奇妙な生態をギャグにしてたのが面白かったし、海というのは人間から考えたらまだまだ計り知れない未知の世界で創作者にとっては想像力をくすぐるネタの宝庫なんだとも思う。
「あとがき」で諸星氏は「昆虫図譜」や「動物図譜」は描かないって言っていたがこれらのテーマの場合彼がどんなものを描くのか凄く興味があるし当然読んでみたいのでそんな事言わずまた描いてほしい♪
以前同じ諸星作品の「私家版鳥類図譜」というのを読んだが、その第2弾として諸星氏が「魚」をテーマに自由に思い描いた様々なストーリーが収録されている。
収録作品としては諸星版人魚姫とでもいうべき「深海人魚姫」、ちょっとラブクラフト的世界を思い出した「鮫人」、異形の進化を遂げた諸星的未来世界を描く「魚が来た!」、魚の持つ特性を妖怪的テイストな面白さで見せる「魚の学校」、日常生活の違和感と魚のイメージを独特の視点で融合させたような「魚の夢を見る男」、海にまつわる人々の間で噂される謎の女性をめぐる不思議な話「深海に還る」、魚の生態を面白おかしくギャグ的に紹介した「ネタウナギ」の7編が載っている。
「深海人魚姫」はおとぎ話的世界設定ながら妙な生き物とか深海人魚たちの独自の生態設定など諸星らしさがよく出ている作品だったし、「鮫人」は諸星が得意とする中国歴史モノのパターンを使いながらも異界の住人との遭遇という点で別パターンの「人魚姫」譚にも思えたり、「魚が来た!」は科学の進歩で現在のような「生きた魚」が認知されていないというある意味異常な状況が普通な社会という特異さとかロボットの魚を使って楽しむ「釣り」、迷路のような地下のどこか先にある「海」への幻想など退廃的だが夢も残すような不思議な世界観は凄く好きな感じ。
「魚の学校」はこれまた全くカラーが違う不思議話で途中「白鯨」のエイハブ船長や預言者ヨナ、ピノキオが出てきたりする展開とかどこ軽いオカルトチックなノリは同じ諸星作品の「栞と紙魚子」シリーズに近いような奇妙でコミカルな世界で読んでいて楽しい☆
「魚の夢を見る男」はこの本収録の話の中で内容的に一番ダークともいえる作品だがヴィジュアルイメージ的にマグリットの絵「共同発明」を連想するようなものだったり妄想や幻想、悪夢の断片的イメージの中で展開される話はどこか不気味さと孤独感、虚しさがじわじわ迫ってくるような作品だった。
「深海に還る」は最初はどんな話かと油断して読んでいたら実はこの本の中のあるエピソードの続編だという事がわかってきて驚かされたり諸星なりの話の終わらせ方もしみじみと余韻が残る感じで良かった。
「ネタウナギ」は書き下ろしのオマケ漫画だが深海に棲む奇妙な生物の奇妙な生態をギャグにしてたのが面白かったし、海というのは人間から考えたらまだまだ計り知れない未知の世界で創作者にとっては想像力をくすぐるネタの宝庫なんだとも思う。
「あとがき」で諸星氏は「昆虫図譜」や「動物図譜」は描かないって言っていたがこれらのテーマの場合彼がどんなものを描くのか凄く興味があるし当然読んでみたいのでそんな事言わずまた描いてほしい♪

by lucifuge
| 2009-04-05 22:22
| 本/漫画