ラグジュアリーファッションの欲望 |
「ラグジュアリー」とは贅沢とか奢侈という意味らしいが、それはすなわち社会の中の様々な余剰から生まれた豊かさの一つの形であり、この展覧会は17世紀から現在に至る色んな「ラグジュアリー」を辿ったものである。
まず会場で最初に目に入ってきたのがエリザベスⅠ世にまつわる服で半立体にまで盛り上がったゴテゴテの刺繍はまるで身体に別の異形の皮膚をまとっているような存在感があったし、こういう過剰な装飾はかなり私好みな感じ。
それからよくコスチューム史劇系の映画で目にするような18世紀頃のフランスやスペインの貴族たちの服装の数々はまさに豪華で華麗といった贅沢さでアート的に見ても立派なひとつの「作品」だったし、こういう芸術を日常感覚として過ごすような環境って面白いと思う。
また20世紀初頭のショービズ界で使われていたようなダンサーたちの華麗な衣装もクラシックな映画で見た事あるような世界が展開されていて、中世の衣装ほどゴテゴテではないながら神秘性とダークさ、セクシーさを併せ持つようなデザインは見ていてイメージが広がる。
他にも映画「マリー・アントワネット」で登場していたような頭に船を乗せたやり過ぎなヘアデザインとか細かく装飾された数々のヒールの展示なども面白かった。
後のコーナーでは時代と共に機能性を重視したデザインの中でのラグジュアリーを見せるものや、ファッションに現代アートの要素を取り入れたものなどが紹介されリキテンスタインの作品をプリントした衣装やメゾン・マルタン・マルジェラの作る飲料ボトルの王冠で作られたジャケット、トランプで作られたベストなどアイデアとしては面白いながら私が「ラグジュアリー」に求めるものとは違う系統のものが中心だったので展覧会としては前半の方が楽しめたし、自分の作品にとっても前半のファッションの過剰的要素や服の構造デザインなど参考になりそうなものも多かったし前半だけでも十分価値はあったと思う。
今までこういうファッションの展覧会というのはほとんど見た事がなかったが結構面白いものだったし、今度はテーマ的に「ゴスロリとヘヴィメタル」とかダーク系の衣装特集でやってくれる展覧会があればいいのにとかも思った。
例えば映画「ヘルレイザー」のピンヘッドのサイバーパンクな衣装とかメタルゴッドこと「ジューダス・プリースト」のロブ・ハルフォードのレザー&スタッドの鎧と化したような衣装、「マリリン・マンソン」や「クレイドル・オブ・フィルス」などゴス系ミュージシャンの衣装などこちらもある意味過剰な「ラグジュアリー」な気もするし、こういう展覧会が実現したら面白そうなのに♪とも思うが、なかなかこういう公的機関でそういう展示は難しそうかも・・・。