五右衛門ロック |
豊臣秀吉統治時代、大泥棒として名を轟かせた石川五右衛門は秀吉側の汚いやり口によって遂に捕まり釜茹での刑に処されてしまう・・・しかし謎の美女・真砂のお竜をはじめとする仲間たちの仕掛けによって実は五右衛門は生きており、その救出作戦を背後で操っていた南蛮人ペドロたちからある依頼を受ける事になる・・・それは南の島タタラ島にあるという神秘の石「月生石」を盗むという依頼だったが、タタラ島には強靭な支配者クガイ王が君臨しており南蛮諸国も手を出せずにいる難所だった・・・・というようなストーリー。
石川五右衛門を題材にした話という事で観る前はちょっと前に観た「GOEMON」みたいな秀吉時代の日本を股にかけた豪快な時代劇を想像していたが、話が始まってすぐ釜茹での刑になってしまって「どうするんだろう?」と思いきや、いきなり南の島を舞台にした活劇ストーリーが展開していったのには意表を突かれた!
そしていつもながら新感線の舞台に登場するキャラクターは豪快で男気溢れる五右衛門をはじめ一見冷酷だがその裏に何かを秘めたクガイ、セクシーでずる賢い真砂のお竜、しつこく五右衛門を追いまわす頑固な役人・岩倉左門字、母親の事で父クガイと対立中のカルマ王子、そのカルマを利用しクガイを倒してタタラ島を我が物にしようとするバラバ国のボノーとその妻シュザク、五右衛門の過去と何か因縁ありげなタタラの穴掘り隊長インガ、クガイに従順なガモー将軍、とことん胡散臭い南蛮の死の商人・ペドロといった様々な面白さがあって魅力的だったし、五右衛門の過去とクガイの関係やクガイの正体と隠された真意、カルマ王子の母の死の真相、月生石の謎などドラマ面やミステリー面、まさに新感線ならでは!といった派手で迫力ある殺陣のシーンやギャグの数々、大胆にアレンジされた時代風衣装など娯楽の王道エッセンスを存分に詰め込んだ作品に仕上がっていた。
また人物同士の関係性をみてみると五右衛門と左門字の関係は何かルパン三世と銭形警部を思い出したし、そう考えたら真砂のお竜は峰不二子っぽい役割でこれはある意味新感線版「ルパン三世」をやろうとしたのかもしれない。
キャスティング的には五右衛門役を新感線の顔ともいえる古田新太が演じていたのをはじめボノー役の橋本じゅん、ガモー役の栗根まこと、インガ役の高田聖子という常連メンバーの出演が嬉しいし、真砂役の松雪泰子やカルマ役の森山未来など最近の新感線の舞台で大きな役を演じていた俳優たちが出ているのも凄く馴染んでいた感じ。
それから何と映画「GOEMON」で石川五右衛門役をやっていた江口洋介がこの作品では五右衛門を追う役人役という設定とかも笑えるし、クガイ役に北大路欣也という大物が出ている所も作品に重厚さと締まりを持たせている感じで良いバランスだったと思う。
音楽的には文句なしのメタルサウンドが炸裂していたし今回も冠徹矢のハイトーンスクリーミングは凄く冴えていて聴いていて気持ちよかった☆
多少物足りないとすれば衣装デザイン面であるが、五右衛門達のいかにも和風な衣装からタタラ国の清朝軍風衣装、バラバ国の昔のインド風衣装など結構豪華で派手な衣装なものの、新感線ならではのメタル的なハードなイメージが生かされたデザインがこれまでのものに比べてあまりなかった気がする。
そういう面を差し引いても全体としてかなり楽しめる作品だったし、これまでのゲキ×シネ作品は全て観ているがその中でも特に陽気で派手なイメージの作品だったという印象。
