2009年 06月 08日
太陽伝 |
ホラー漫画界の鬼才・日野日出志が70年代に連載した幻の漫画を全1冊にまとめて復刻した「太陽伝」を読んだ。
原始時代、猿人たちと戦いを繰り広げる人類・・・ある部族では過酷な環境からその土地に居座る事に限界を感じ始め、長老の言う「太陽の神」からの「太陽神の申し子とともに太陽が昇る所にある国を目指す」という予言に賛否が巻き起こるが、太陽神の申し子らしい記憶の無い青年ボボが予言どおり現われた事から部族長黒獅子を中心に部族たちは太陽の国を目指して旅に出始める・・・しかし日増しに人気を増すボボに嫉妬した黒獅子の息子ハヤテは自らの仲間と共にボボを陥れようと画策していた・・・といったストーリー。
日野日出志といえば「地獄の子守唄」や「毒虫小僧」、「わたしの赤ちゃん」などトラウマになりそうなくらいおどろおどろしく気持ち悪い絵が強烈なホラー漫画で有名な人であるが、この「太陽伝」のような熱い人間たちの一代建国物語のような作品は意外で新鮮だったし、当時出たコミックスでは変な所で着られて終わっててファンから最低の作品といわれていた漫画ながら未収録部分も復刻された完全版として甦ったのは貴重。
最初は昔の少年漫画の定番的な戦いと友情、増えていく仲間といった要素を前面に出したような展開でストーリー的にはありがちなのだが、やはりそこは日野日出志!出てくる猿人のボスの顔が明らかに不気味だったり、後半になると敵キャラだけでなくボボの仲間になっていく奇妙な能力を持ったキャラクターたちのデザインもかなり怪物的に不気味でストーリー的には熱くドラマティックな男臭い話なのにヴィジュアル的には異様な世界になってしまってるのが何か凄い・・・・。
まあ後半に関してはボボがひたすら出会う連中にバカの一つ覚えみたいに国作りの話をして説得しているだけだったり、出会った連中も案外簡単に納得して説得されてしまったり描き方が薄っぺらくて「やはり日野氏にはこういう漫画を描くのは不得意かも」と思わせるがこういうジャンルの漫画でここまで異様な雰囲気のものは読んだ事がないしそういう意味ではやはり強烈な1作だった。
またこれからクライマックスという所でいかにも打ち切りな終わり方になってるのは残念だが、巻末の日野氏のインタビューによるともっと壮大なオチが用意されていたのには是非漫画で見たかったと思った。
その巻末のインタビューであるが、いかにして日野日出志が漫画家になったかという話やプロになってからの話、作品に対する思いなど様々な話が載っていて非常に興味深かったし、ホラー漫画では疎外された者や迫害された者の孤独と絶望の世界を描いてきた彼がこの「太陽伝」では強き者も弱き者も幸せに暮らせる国を作るという大きな目的のために動いていく人々を描こうとしたというのも意味深げで、これまでの日野日出志のイメージとはちょっと違った面白さが見えた作品でもあったと思う。
原始時代、猿人たちと戦いを繰り広げる人類・・・ある部族では過酷な環境からその土地に居座る事に限界を感じ始め、長老の言う「太陽の神」からの「太陽神の申し子とともに太陽が昇る所にある国を目指す」という予言に賛否が巻き起こるが、太陽神の申し子らしい記憶の無い青年ボボが予言どおり現われた事から部族長黒獅子を中心に部族たちは太陽の国を目指して旅に出始める・・・しかし日増しに人気を増すボボに嫉妬した黒獅子の息子ハヤテは自らの仲間と共にボボを陥れようと画策していた・・・といったストーリー。
日野日出志といえば「地獄の子守唄」や「毒虫小僧」、「わたしの赤ちゃん」などトラウマになりそうなくらいおどろおどろしく気持ち悪い絵が強烈なホラー漫画で有名な人であるが、この「太陽伝」のような熱い人間たちの一代建国物語のような作品は意外で新鮮だったし、当時出たコミックスでは変な所で着られて終わっててファンから最低の作品といわれていた漫画ながら未収録部分も復刻された完全版として甦ったのは貴重。
最初は昔の少年漫画の定番的な戦いと友情、増えていく仲間といった要素を前面に出したような展開でストーリー的にはありがちなのだが、やはりそこは日野日出志!出てくる猿人のボスの顔が明らかに不気味だったり、後半になると敵キャラだけでなくボボの仲間になっていく奇妙な能力を持ったキャラクターたちのデザインもかなり怪物的に不気味でストーリー的には熱くドラマティックな男臭い話なのにヴィジュアル的には異様な世界になってしまってるのが何か凄い・・・・。
まあ後半に関してはボボがひたすら出会う連中にバカの一つ覚えみたいに国作りの話をして説得しているだけだったり、出会った連中も案外簡単に納得して説得されてしまったり描き方が薄っぺらくて「やはり日野氏にはこういう漫画を描くのは不得意かも」と思わせるがこういうジャンルの漫画でここまで異様な雰囲気のものは読んだ事がないしそういう意味ではやはり強烈な1作だった。
またこれからクライマックスという所でいかにも打ち切りな終わり方になってるのは残念だが、巻末の日野氏のインタビューによるともっと壮大なオチが用意されていたのには是非漫画で見たかったと思った。
その巻末のインタビューであるが、いかにして日野日出志が漫画家になったかという話やプロになってからの話、作品に対する思いなど様々な話が載っていて非常に興味深かったし、ホラー漫画では疎外された者や迫害された者の孤独と絶望の世界を描いてきた彼がこの「太陽伝」では強き者も弱き者も幸せに暮らせる国を作るという大きな目的のために動いていく人々を描こうとしたというのも意味深げで、これまでの日野日出志のイメージとはちょっと違った面白さが見えた作品でもあったと思う。
by lucifuge
| 2009-06-08 22:15
| 本/漫画