衝撃現代百物語 新耳袋勝手にしやがれ |
これは雑誌「映画秘宝」のライターとして知られるギンティ小林氏を中心にしたひとクセもふたクセもあるような仲間たちが現代の百物語といわれる実話怪談集「新耳袋」の舞台となった現場を実際に突撃レポートしに行く模様を描いたドキュメンタリーであり、そのコテコテでドロドロな人間ドラマやトラブルの数々、まさにライブ感覚で心霊現象を追うような恐怖とミステリーに満ちた未知の体験談などそこにはいつまでも熱くておバカな男たちの「本気」で「本音」の物語があったし、こんな本は今まで読んだ事がなかった私には凄い衝撃だった!
そして先月末遂にその第3弾「衝撃現代百物語 新耳袋勝手にしやがれ」が発売になり買ってあったのを読んだ。
今回は「人の姿をした幽霊映像を撮影せよ!」を目標に「幽霊ゲームセンター」、「座敷わらしの出る旅館」、「恩徳の化け物屋敷」、「時空が歪むO池」、「渡り女のいるホテル」、「Y霊園」、「埼玉愛犬家連続殺人の現場」、「大阪I山トンネル」、そして前のシリーズにも登場した「K観光ホテル廃墟」への再挑戦といった構成。
まず今回の「新耳Gメン」こと突撃隊のメンバーであるが、ギンティ氏の他に映画監督の豊島圭介、カメラマン大郷ひさお、プロデューサーのキング山口、映像会社「シャイカー」の後藤社長、単行本編集担当の田野辺尚人、アルバイトの市川力夫といった面々で今回のメンバーには前のシリーズでかなりなインパクトを残した漫画家・ヒロモト森一の姿はない・・・・読者にとっては前のシリーズで様々な面白さを見せてくれた彼がいないのは残念だが、元々あれだけ心霊が苦手な人にこの無茶な突撃レポート参加はキツイものがあったのだろうと思ったし、読み進めていくと実は交通事故に遭って参加は無理という何かいわくめいた出来事もプロローグからしてちょっと怖い。
そして今回新たに不思議SNSの管理人やミリオン出版のオカルト系雑誌のカメラマンとして活躍されている住倉カオス氏が参加するが、オカルト系の仕事を多く手掛ける彼が実は心霊現象に対して意外な見方をしているのが判明したりでこういうメンバー構成からしても今回のレポートは何かありげでワクワクさせる。
最初の「幽霊ゲームセンター」ではゲームセンター店長の話からしていきなり高純度のガチな心霊体験が飛び出すし、突撃レポでは臨場感溢れるメンバーそれぞれの体験が文章から滲み出るように感じられた。
続く「座敷わらしの出る旅館」ではネタ的には「座敷わらし」だし「悪い」ものではないながら現場での怪奇現象の数々とギンティ氏が大郷カメラマンに行なったイタズラとそれが原因で後をひく大郷カメラマンとのギクシャクした関係の描写も「こんな状態で取材は一体どうなるのか・・・?」と思わせるハラハラ感がある。
そして人が消えるという「時空が歪むO池」ではさらに暴走するイタズラとメンバーを襲った不可解な現象、偶然遭遇してしまった謎の作業服の男たちといったミステリアスな要素が絡んだりでサスペンスな展開!
「渡り女のいるホテル」ではただでさえ怪奇現象が起きるという場所で「百物語」を開こうというとんでもない事態と今度はギンティ氏をターゲットにした住倉氏&豊島監督のタチの悪いイタズラ、そして社長のレポートでの怖さからか「シューシュー」という呼吸音を出す描写などエピソード的に盛り沢山な章で面白かったし、その描写から私は読んでいて勝手に社長をその後「ベイダー社長」とか呼びながら読み続けてしまった(笑)
その後の「Y霊園」でのレポートを経て私が今回の本で最もインパクトがあり面白かった「愛犬家連続殺人の現場」でのレポートであるが、怪奇現象より何より豊島監督がミクシィで見つけてきたという自称「愛犬家連続殺人事件の専門家」という青年「ようちゃんこ」なる人物が奇怪過ぎる!
前シリーズのヒロモト氏や松崎君、コブラ氏、今回の豊島監督など取材の中での悪ふざけなど結構タチの悪い行動や言動をする人はいたが、それはあくまで「悪ふざけ」や「ワガママ」の範疇だったし本来ちゃんとした人であると思うのだが、この「ようちゃんこ」なる人物は完全にアブない・・・・。
殺人事件への異常な執着と現実に誰々を殺したいとか言ってたりこの先何かやらかさないか怖いが、この章では霊よりむしろ生きてる人間の方が怖いのでは?とも思った。
ただこういう奇人を交えたレポートはその人物のせいで起こる人間関係の波が本当に意味不明で予想外で読んでる分にはかなり面白い!
「大阪Iトンネル」では特製自転車「殴り込みGO」に乗ったメンバーたちの決死のレポートとまたまたやった強烈なイタズラの仕返しなどが緊迫感ありまくりだったし、車の窓についた生命線のない手形などそこで実際に起こった怪奇現象の数々も興味深い・・・それから彼等が目撃した子供だけが乗っていたという謎の車も一体何だったのか気になる・・・。
それにしてもこの章で明かされた豊島監督のとんでもない「野望」には驚いたし(笑)、この時の写真からギンティ氏の着ていた勝新太郎の映画「浪人街」のTシャツもどこでそんなの入手したのかメッチャ気になる。
ラストは再び戻ってきた廃墟の「K観光ホテル」へのリベンジであるが、ホラー映画「スクリーム」で言っていたホラー映画のセオリーのように「3で原点に戻って新たな謎が・・」のような展開を期待させる・・・。
このホテルは松竹芸人たちが肝試しを行い背後に顔の右半分が崩れた女が映っていたという心霊系映像では超有名なものが撮られたことでも知られる場所であるが、ここでも毎度の事ながら誰が突撃するかで男たちの巧みな駆け引きと本音のやりとり、暴走するおフザケが展開し、面白い!
さらにとても東大出とは思えない下品な自作歌を歌う豊島監督、立ちションするキング山口など「こんな場所でこんな事して大丈夫か?」と思うような描写や、現実的に脆くなって危険過ぎる建物内部でのレポートなど今回もライブ感覚を感じさせる心霊ドキュメントだったし、「新耳Gメン」たちの暴走っぷりはまさに今回のサブタイトルについた伝説的パンクロックバンド「セックス・ピストルズ」のアルバム「勝手にしやがれ」にピッタリなものだったと思う。
読んでいてまだまだ他に最凶心霊スポットはあるだろうし、彼等の冒険は今後も続きそうでさらに期待したい!
次回のサブタイトルは「映画秘宝」的タイトルで考えるなら「狂い咲き」とか「総進撃」、はたまた「危機一発!」とかなんかも良さそう☆なんて勝手に思ったり(笑)
とにかく今回も文句なしに恐ろしく楽しませてくれる内容で満足だった☆