2009年 08月 18日
妖怪天国ニッポン 絵巻からマンガまで |
京都国際マンガミュージアムで開催中の展覧会「妖怪天国ニッポン 絵巻からマンガまで」を見に行ってきた。
この展覧会は過去から現在にいたるまで戯画や玩具の題材となって文化の一端を担い、人々を楽しませてきた「妖怪」の様々な足跡をめぐる展示であり、江戸期の歴史的資料や絵画、絵巻、そして紙芝居やマンガにいたるまで様々な「妖怪文化」を見せてくれる。
まず「百鬼夜行絵巻」や「狂画苑」などの絵巻としての妖怪は実に奇妙ながら幽霊画のように恐ろしくはなく、ユーモアに富んだ造形とキャラクター設定で見ていて楽しいし、さらに鳥山石燕や山東京伝などの図鑑的なもの、そして歌川国芳や月岡芳年など浮世絵の時代はそのユーモア性やキャラクター性を発展させた華やかさも感じられる。
また玩具面では江戸末期の「妖怪かるた」も現代のトレーディングカードに通じるようなヴィジュアル的要素を持っていたり、妖怪双六はコマ割的盤面構成に絵と文字という構造は今のマンガにも近いような印象を受けた。
明治期では河鍋暁斎の怪奇画をはじめ、新聞の挿絵としての妖怪画、妖怪の日航写真なんかのコレクションも面白かったし、大正期から出始めた妖怪を題材としたマンガとその変遷についても凄く興味深い資料がいっぱい!
特に現代の妖怪マンガの第一人者である水木しげるにまつわる展示は面白く、今では妖怪漫画の代名詞ともいえる「鬼太郎」が紙芝居や貸本漫画時代には本来多くの作家たちが描いていたため水木以外の鬼太郎作品画存在していたというのは知っていたが、その現物を見たのは初めてだったし、他にも水木の名作「コケカキイキイ」にも紙芝居や漫画の別作家バージョンが多く存在していたというのも面白い。
水木しげるといえば私自身子供の頃読んだ「妖怪入門」シリーズに大きな影響を受けたし、今回の展示を振り返ってみるとあの入門シリーズで水木が描いていた妖怪の原版は鳥山石燕など昔の妖怪本をそれぞれ手本にしたものだったし、その石燕の絵もさらに昔の絵巻などに似た妖怪がいたりで「妖怪」というもののイメージは時代や作家を経てリメイクが繰り返され進化してきたものだとも思える。
それに江戸時代の「神農絵巻」では「屁」をやたらとネタにしていたりする点も水木作品に通ずるものがあったり、作品センス的に過去の妖怪作品の色んな部分で共通点を感じる事からも水木しげる自身妖怪文化の歴史を体現している存在になっているのかもしれない。
また水木以外にも手塚治虫や石ノ森章太郎、藤子不二雄、楳図かずお、諸星大二郎などの描いた昭和の妖怪ブーム当時の妖怪関連漫画から「孔雀王」や「地獄先生ぬ~べ~」、「陰陽師」など80~90年代に起こった第二次妖怪ブームの漫画、そして「もっけ」や「妖怪のお医者さん」、「もののけもの」など今の時代の合わせて進化した妖怪漫画の展示などその内容や絵柄の移り変わりの変遷は非常に興味深い。
作品的に第一次や第二次の妖怪漫画に馴染み深い私としては妖怪は多少おどろどろしい方が好きだし、「もののけもの」などやたらカワイイ存在に描かれ過ぎな最近の妖怪漫画はヴィジュアル的にはそぐわない感じだが、バトル中心だった昔の妖怪漫画とは違って今の妖怪漫画は「夏目友人帳」や「蟲師」、「もっけ」など人との共存や異なる世界について深く考えられたドラマ面が魅力的だったりまた別の面白さがあるように思える。
それから何といっても漫画展示コーナーでは今回の展覧会の図録収録用に描き下ろされた諸星大二郎の漫画「ネット妖怪天国ニッポン」の原画が展示してあって、私自身大ファンである彼の絵を生で見られたというのも凄く嬉しかった!
それから他に印象的な展示だったのは江戸期によく作られたという妖怪の「ミイラ」でここでは「人魚」と「くだん」が展示されていたのだが、近くで見ても本当に良く出来ていて単純に創作オブジェとしてもかなり高いクオリティだったし、不気味ながら愛嬌のある造形は絵巻や浮世絵にも通じるセンスで日本人の作る妖怪というのはどんな形の表現でも実に楽しく楽しませてくれるような存在に思えた。
展示全体としてかなり濃い内容で色んな貴重なものが見れたり新しい発見があったりで凄く面白い展覧会だった☆
この展覧会は過去から現在にいたるまで戯画や玩具の題材となって文化の一端を担い、人々を楽しませてきた「妖怪」の様々な足跡をめぐる展示であり、江戸期の歴史的資料や絵画、絵巻、そして紙芝居やマンガにいたるまで様々な「妖怪文化」を見せてくれる。
まず「百鬼夜行絵巻」や「狂画苑」などの絵巻としての妖怪は実に奇妙ながら幽霊画のように恐ろしくはなく、ユーモアに富んだ造形とキャラクター設定で見ていて楽しいし、さらに鳥山石燕や山東京伝などの図鑑的なもの、そして歌川国芳や月岡芳年など浮世絵の時代はそのユーモア性やキャラクター性を発展させた華やかさも感じられる。
また玩具面では江戸末期の「妖怪かるた」も現代のトレーディングカードに通じるようなヴィジュアル的要素を持っていたり、妖怪双六はコマ割的盤面構成に絵と文字という構造は今のマンガにも近いような印象を受けた。
明治期では河鍋暁斎の怪奇画をはじめ、新聞の挿絵としての妖怪画、妖怪の日航写真なんかのコレクションも面白かったし、大正期から出始めた妖怪を題材としたマンガとその変遷についても凄く興味深い資料がいっぱい!
特に現代の妖怪マンガの第一人者である水木しげるにまつわる展示は面白く、今では妖怪漫画の代名詞ともいえる「鬼太郎」が紙芝居や貸本漫画時代には本来多くの作家たちが描いていたため水木以外の鬼太郎作品画存在していたというのは知っていたが、その現物を見たのは初めてだったし、他にも水木の名作「コケカキイキイ」にも紙芝居や漫画の別作家バージョンが多く存在していたというのも面白い。
水木しげるといえば私自身子供の頃読んだ「妖怪入門」シリーズに大きな影響を受けたし、今回の展示を振り返ってみるとあの入門シリーズで水木が描いていた妖怪の原版は鳥山石燕など昔の妖怪本をそれぞれ手本にしたものだったし、その石燕の絵もさらに昔の絵巻などに似た妖怪がいたりで「妖怪」というもののイメージは時代や作家を経てリメイクが繰り返され進化してきたものだとも思える。
それに江戸時代の「神農絵巻」では「屁」をやたらとネタにしていたりする点も水木作品に通ずるものがあったり、作品センス的に過去の妖怪作品の色んな部分で共通点を感じる事からも水木しげる自身妖怪文化の歴史を体現している存在になっているのかもしれない。
また水木以外にも手塚治虫や石ノ森章太郎、藤子不二雄、楳図かずお、諸星大二郎などの描いた昭和の妖怪ブーム当時の妖怪関連漫画から「孔雀王」や「地獄先生ぬ~べ~」、「陰陽師」など80~90年代に起こった第二次妖怪ブームの漫画、そして「もっけ」や「妖怪のお医者さん」、「もののけもの」など今の時代の合わせて進化した妖怪漫画の展示などその内容や絵柄の移り変わりの変遷は非常に興味深い。
作品的に第一次や第二次の妖怪漫画に馴染み深い私としては妖怪は多少おどろどろしい方が好きだし、「もののけもの」などやたらカワイイ存在に描かれ過ぎな最近の妖怪漫画はヴィジュアル的にはそぐわない感じだが、バトル中心だった昔の妖怪漫画とは違って今の妖怪漫画は「夏目友人帳」や「蟲師」、「もっけ」など人との共存や異なる世界について深く考えられたドラマ面が魅力的だったりまた別の面白さがあるように思える。
それから何といっても漫画展示コーナーでは今回の展覧会の図録収録用に描き下ろされた諸星大二郎の漫画「ネット妖怪天国ニッポン」の原画が展示してあって、私自身大ファンである彼の絵を生で見られたというのも凄く嬉しかった!
それから他に印象的な展示だったのは江戸期によく作られたという妖怪の「ミイラ」でここでは「人魚」と「くだん」が展示されていたのだが、近くで見ても本当に良く出来ていて単純に創作オブジェとしてもかなり高いクオリティだったし、不気味ながら愛嬌のある造形は絵巻や浮世絵にも通じるセンスで日本人の作る妖怪というのはどんな形の表現でも実に楽しく楽しませてくれるような存在に思えた。
展示全体としてかなり濃い内容で色んな貴重なものが見れたり新しい発見があったりで凄く面白い展覧会だった☆

by lucifuge
| 2009-08-18 22:50
| 芸術・アート/展覧会